『ブッダの言葉』を眺めながらもの思う。

気がつけばいつの間にか今日で4月も終わり、人によっては10連休以上のゴールデンウィークに突入しますね。 ここ数日急激に気温が上がり、うららかな春を通り越して既に初夏の気候となりつつあります。特定の話題やテーマについて掘り下げて考える時間が乏…

反日デモに内在する中国共産党の危機:共産主義は何故、挫折せざるを得ないか。

中国や韓国で連日繰り広げられた反日デモの原因には、中国の共産党独裁体制に対する人民の不満や反発の鬱積、日本の国連安全保障理事国加入への反対、中国側の内政的観点による人民のガス抜きなど幾つかの要因を考える事が出来る。 中国政府の見解では、日本…

本居宣長を突き動かした“もの学びの力”と日本の国学の独自性

本居宣長(上) (新潮文庫)作者: 小林秀雄出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1992/05/29メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 32回この商品を含むブログ (53件) を見る 江戸時代の国学者・本居宣長(1730-1801)は、伊勢(三重県)飯高郡松阪(松阪市)の商家・小…

小林秀雄『本居宣長』

小林秀雄の文庫版『本居宣長』を暇を見つけて読みながら、日本の古典文学が様々な角度から照射する日本的精神の美しさや奥深さに心を揺り動かされています。 しかし、古典の文体を長らく読み込んでいない為、この本をすらすらと読み進めることはなかなか困難…

NHKの受信料支払い拒否の増大と公共放送に求められるべきもの

NHK:受信料拒否・保留74万7000件 3月末で――毎日新聞 NHKの橋本元一会長は7日会見し、3月末で受信料の支払い拒否・保留件数が74万7000件に達したと発表した。「悲観的に考えざるを得ず、収支の均衡を目指し、予算執行を厳しく制御する…

日本の伝統と心情に根ざした“桜花の美”と“菊花の美”

気がつけば暦は四月へと時季を移し、つい一週間ほど前まで寒さを感じていた外気が緩やかに和らいできました。 眠っていた生命が萌ゆる春の柔らかく暖かな息吹を感じ、先日出ていた桜の開花宣言を受けて“日本人の美意識の象徴”としての桜に思いを馳せました。…

『生命の救助と病気の治療』から『生命の選別と生死の判断』へと向かう医療:安楽と快適への流れ

自由主義社会の生命に関する倫理問題の多くは、出生前診断(マス・スクリーニング)や遺伝子治療、人工妊娠中絶、クローン人間産生、ES細胞の医療資源化など医療領域やバイオテクノロジーの領域で発生してくる。 生死に関わる問題や重篤な疾患の治療の機会…

フランシス・ゴールトンの優生学の系譜と生命倫理学のSOLとQOLの対立

ダーウィンを起源とする進化論によれば、自然界の生物達は、自然選択と突然変異を通して、新たな形質を獲得し異なる種へと進化していきます。 自然選択(自然淘汰)は、他の個体との食料の争奪戦や繁殖の為の異性獲得の闘争といった生存競争を勝ち抜いた個体…

変わるべき個人と変えるべき環境・他者との原因帰属を巡る葛藤

カウンセリングや心理療法といった個人の心理的問題の解決を援助し、精神症状の苦痛を緩和していくアプローチが抱えている原理的な限界性として、“個人の内面心理と社会環境の調整の限界”が考えられます。ロジャーズやマズローの人間性心理学が人間の本性と…

近代社会システムの揺らぎとNEET人口増加の問題

「ニート」2002年で85万人、定義見直しで膨らむ――YOMIURI ON-LINE 内閣府の「青少年の就労に関する研究会」(委員長・玄田有史東大助教授)は22日、学校に行かず、働かず、職業訓練にも参加しない「ニート」と呼ばれる若者が2002年には85万人…

ブログにおける議論の促進と抑制の原理

むだづかいにっき♂さんに、何でもかんでも総ブログ化計画:【募集9】批判や反論……を題材にした“批判や反論……大人の対処法は?”という興味深い記事があったので、インターネット内のブログやウェブサイトの掲示板などにおける議論の促進と抑制について考えて…

地震列島・日本を再認させる福岡沖玄海地震を受けて

昨日、午前10時53分頃、福岡沖玄海地震が発生し、大規模な地震が少ないとされる福岡県、佐賀県を中心とする九州北部、甚大な被害を蒙った玄海島をはじめとする島嶼部、山口県西部などに住む人々を震撼させた。 今まで磐石だった足下を支える地面が不意に揺ら…

カール・ロジャーズの意外な一面:環境管理につながる近代的社会システムへの葛藤

カウンセリング場面においては、温厚誠実な人柄を貫き、クライアントの語る話の内容を真摯に傾聴し続けた来談者中心療法の創始者カール・ロジャーズは、一人の思想家や活動家として見てみても興味深い人物である。 クライアントの感情や価値観を共感的に理解…

性の特殊的価値の定立への賛否が意味するもの:流動化を志向する関係性と安定化を志向する関係性

社会的弱者である子どもや暴力への抵抗力の弱い女性を一方的な欲望充足の道具とする性犯罪者に対する怒りや憤慨というものは、人間の性の尊厳を認識する市民にとっておよそ普遍的に共有されるものである一方、性に関連する行為や発言を過剰に意識して特別な…

子どもの沈黙の理由を語るグッドウィンのBLIND理論

性的虐待を受けた子どもの大半は、その行為に嫌悪や不快を感じていても、それをはっきりと言葉で表現して拒絶することが出来ない。 子どもが何故、性的虐待に対して沈黙を守るのか、拒否の意思表示が出来ないのかという理由について、グッドウィン(J.M.Goodw…

閉鎖的環境における性的虐待の隠蔽と歪曲:社会的弱者としての子どもの安全と幸福を願って

人間の性にまつわる尊厳を侵犯する性的虐待(sexual abuse)には、大きく分類して二つの加害者−被害者関係が想定できます。 一つは、全く見知らぬ他人が加害者となり、性行為(セックス)や猥褻行為(性に関連するあらゆる行為)などの性的被害を受ける『外部…

協力的ネットワークの拡大と共同体成立を可能とするインセスト・タブー:ウェスターマーク効果

id:cosmo_sophy:20050312において近親者による性的虐待が近親姦禁忌(インセスト・タブー)に抵触するという事を少し書きましたが、もう少し人間社会の禁忌について敷衍して考えてみます。 一定以上の普遍的コンセンサスを持つ社会通念や倫理規範である近親…

性的虐待・性暴力の定義と子どもに対する性的虐待の精神的影響

家庭内における性的虐待という残酷極まりないエゴイスティックな虐待行為は、人間社会の倫理規範を二重に侵犯していると言えます。 一つは、『性暴力(sexual abuse or sexual violence)』という子どもの性的尊厳の不条理な侵害という侵犯行為で、これは強姦…

反社会性人格障害と被害者意識を伴う認知傾向

精神病理学の中で、心理的原因によって種々の症状や機能障害が出る神経症水準の疾患は、カウンセリングや心理療法などで比較的容易に治療でき、内因性・心因性の統合失調症(精神分裂病)に代表される精神病水準の疾患も、現実認識能力の著しい低下は見られ…

京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』を読んで:生きるモノと生きるコトの哲学的思惟と現実世界

書籍:陰摩羅鬼の瑕 著者:京極夏彦 出版社:講談社 京極夏彦が描く日本的怪奇趣味と人間心理にまつわる自由無碍な思索に満ち溢れた京極堂シリーズを数年ぶりに読み終えた。 前作『塗仏の宴 宴の支度』『塗仏の宴 宴の始末』を読了して、既に2年以上の歳月…

「ぱちもん」心理学研究所を読んで:沈黙のオーディエンスと主体的オーディエンス

id:cosmo_sophy:20050213で私が記述した『「いんちき」心理学研究所を巡る沈黙のオーディエンスの意識化と孤独感について』の記事を踏み台にして、id:santaro_yさんが『オーディエンスとブロガーの関係性』『沈黙のオーディエンスから主体的オーディエンスへ…

所得獲得の経路と経済階層の固定化の相関関係と正義・公正の原理

id:cosmo_sophy:20050302において示したのは、現代社会の経済活動において所得を獲得する方法には、大きく分類して以下の3種類があるという事、そして、雇用形態・職業選択・経済格差に関する世間一般の不平不満が“利益獲得の経路の選択と経済階層の固定化”…

所得獲得の経済活動を巡る倫理的パラドックス:スキーマを介在した価値命題の視線を通して

世界の本質に目を向ける時、私たちは自然世界に対して壮大や優美を感じその摂理に驚嘆するが、一度、本質探究のまなざしをゲゼルシャフト(功利主義的な利益社会)としての人間社会へと向けると、閉塞感や不平等感を感じその秩序に何らかの不満や問題を感じ…

快楽と利益を求める功利主義の強靭な影響力

哲学史上には、倫理の指標を取り扱う数多くの思想的立場がありますが、現代社会で優勢というよりは最早支配的と言える『自由主義(liberalism)』『功利主義(utilitarianism)』の基礎を論述したのはJ・S・ミル(John Stuart Mill 1806〜1873 英)です。 ミル…

皇太子妃雅子さまの公務復帰延期とSO(スペシャル・オリンピック)について

皇室:雅子さま、SO冬季世界大会出席を中止 出発1時間前に−−数日体調すぐれず 宮内庁は26日午前、同日午後からの予定だった皇太子妃雅子さまの長野県訪問を取りやめると発表した。「スペシャルオリンピックス冬季世界大会」出席のため、1年3カ月ぶり…

薬物に関するメモ:サメの擬似科学とマリファナの違法性の問題

海洋生物に関する俗説として、サメは癌に罹患しないと言われていたが、現在のサメの生態に関する観察結果からサメも癌に罹患することが判明している。 サメが癌にならないという俗説からの類推で、サメの軟骨の抽出物には抗癌作用や癌予防作用があるという擬…

神の恩寵から離れた優美さ・生と隣接する死と愛

神の属性が、一切の過失と欺瞞のない完全無欠さであるとすれば、神の恩寵(grace)は、人間よりも動物に多く与えられている。 人間の行動やコミュニケーションは目的志向や自己意識によって規定され、目的達成や自己意識の満足に向かう過程には幾多の過失や欺…

あびる優の窃盗行為のカミングアウトと放送倫理:ライブドア対フジテレビの経済問題

万引き告白:女性タレントを聴取 警視庁、処分検討――毎日新聞 日本テレビ系のバラエティー番組で、女性タレント(18)の窃盗行為をクイズの題材にしていた問題で、警視庁少年事件課がタレントから窃盗容疑で事情聴取していたことが分かった。調べに対し、…

ネグリ=ハート『<帝国>』の雑感3:差異化の欲望に駆動された近代化プロセスが実現したものと疎外したもの

著作:『 グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』 著者:アントニオ・ネグリ,マイケル・ハート 訳者:水嶋 一憲,酒井 隆史,浜 邦彦,吉田俊実 出版社:以文社 ネットワーク化された政治的主体性であり、無数の変数によって規定される権力の諸関係…

グローバリゼーションの光景:ポストコロニアリズム・生産の脱中心化・経済社会の規律性

アントニオ・ネグリとマイケル・ハートの『帝国』において描かれるグローバル化された世界の光景とは、アメリカの軍事的ヘゲモニーを始点として進行する経済的・社会的なスタンダード化によって眼前に開かれてくる。 それによって、軍事力による世界秩序であ…