2005-02-01から1ヶ月間の記事一覧

薬物に関するメモ:サメの擬似科学とマリファナの違法性の問題

海洋生物に関する俗説として、サメは癌に罹患しないと言われていたが、現在のサメの生態に関する観察結果からサメも癌に罹患することが判明している。 サメが癌にならないという俗説からの類推で、サメの軟骨の抽出物には抗癌作用や癌予防作用があるという擬…

神の恩寵から離れた優美さ・生と隣接する死と愛

神の属性が、一切の過失と欺瞞のない完全無欠さであるとすれば、神の恩寵(grace)は、人間よりも動物に多く与えられている。 人間の行動やコミュニケーションは目的志向や自己意識によって規定され、目的達成や自己意識の満足に向かう過程には幾多の過失や欺…

あびる優の窃盗行為のカミングアウトと放送倫理:ライブドア対フジテレビの経済問題

万引き告白:女性タレントを聴取 警視庁、処分検討――毎日新聞 日本テレビ系のバラエティー番組で、女性タレント(18)の窃盗行為をクイズの題材にしていた問題で、警視庁少年事件課がタレントから窃盗容疑で事情聴取していたことが分かった。調べに対し、…

ネグリ=ハート『<帝国>』の雑感3:差異化の欲望に駆動された近代化プロセスが実現したものと疎外したもの

著作:『 グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』 著者:アントニオ・ネグリ,マイケル・ハート 訳者:水嶋 一憲,酒井 隆史,浜 邦彦,吉田俊実 出版社:以文社 ネットワーク化された政治的主体性であり、無数の変数によって規定される権力の諸関係…

グローバリゼーションの光景:ポストコロニアリズム・生産の脱中心化・経済社会の規律性

アントニオ・ネグリとマイケル・ハートの『帝国』において描かれるグローバル化された世界の光景とは、アメリカの軍事的ヘゲモニーを始点として進行する経済的・社会的なスタンダード化によって眼前に開かれてくる。 それによって、軍事力による世界秩序であ…

相補的な関係性(complemental relation)と対称的な関係性(symmetric relation)

id:cosmo_sophy:20050216において示された関係性は、『相補的な関係(complemental relation)』である。 相補的な関係性は、支配と服従の関係を戯画化した『主人と奴隷のパラドックス』で奴隷のいない主人は想定できないように、一方の行動パターンと他方の行…

“国民性の差異”を生み出す文化的環境と経験的学習

ナチスドイツの台頭によるユダヤ人迫害を避けて、アメリカに亡命したゲシュタルト心理学者にクルト・レヴィン(K.Lewin)がいます。 レヴィンは、科学的な還元主義に基づく行動科学的な心理学ではなく、知覚研究を基盤において心理現象の全体性や有機性を重視…

大阪教職員殺傷事件から社会システムを通して少年事件を考えてみる。

大阪教職員殺傷:襲撃対象は元担任か 逆恨みした可能性も 大阪府寝屋川市立中央小で14日、教職員3人が殺傷された事件で、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された卒業生の無職少年(17)が、6年生の時の担任だった男性教師を襲う目的で同校に侵入した疑いの強…

『遊びと空想の理論』からの連想による精神分析の“場”の特殊性

現実と想像の境界線が朦朧として、曖昧になる精神状態を呈す統合失調症(精神分裂病)に対するサイコセラピー、カウンセリングの本質が何処にあるかを考えると、それはメタ・コミュニケーションの傾向や性癖の変容にある。 これは、カウンセリング及び心理療…

「いんちき」心理学研究所を巡る沈黙のオーディエンスの意識化と孤独感について

「いんちき」心理学研究所|終了 「いんちき」心理学研究所|終了:その後 憂鬱なプログラマによるオブジェクト指向日記:沈黙のオーディエンス 浅野教授という方が開設されていた「いんちき」心理学研究所が、閉鎖の運びとなったようです。 「いんちき」心…

グレゴリ−・ベイトソンの学際的研究:Ecology of Mind…自然と文明の共生

グレゴリ−・ベイトソン(Gregory Bateson:1904-1980)のコミュニケーション理論が既存の学問体系に投げ掛けた問いとは、統合失調症の発病や経過に関する家族システムだけの問題に留まらない。 ベイトソンがコミュニケーション理論に託した革新的な野心とは、『…

統合失調症の“言葉のサラダ”とベイトソンのコミュニケーション理論の研究

統合失調症(精神分裂病)の代表的な症状に、言語の論理性の混乱と他者とのコミュニケーションの障害を示す“言葉のサラダ”というものがあります。 言葉のサラダとは、言語によって構築される観念(概念)と意味の体系が破綻して、支離滅裂で共通理解不能な言…

人間社会の“脅し”と自然世界の“脅し”のアナロジーの不適切性

id:cosmo_sophy:20050210において、人間固有の言語的なコミュニケーションの新たな可能性の地平としてのメタ・コミュニケーションについて粗描しました。 恐喝未遂:俳優・萩原健一容疑者を逮捕 出演料1050万円要求の疑い−−警視庁http://www.mainichi-ms…

メタレベルの言語的コミュニケーションの特異性と可能性

人間の言語的コミュニケーションの特異性というものが何処にあるのかと考える時には、対照的な一般化された抽象レベルの存在が思い浮かぶ。 それは、現実世界に存在する個別のバラバラな事物に、“概念”によって秩序を与え、共通理解を可能にする事でもある。…

小川洋子『博士の愛した数式』を読んで:永遠の真理と愛

書籍:博士の愛した数式 著者:小川洋子 出版:新潮社 小川洋子という女流作家の小説を、偶然、手に取って読んでみました。 『博士の愛した数式』の書籍はそれほど重厚ではないので、気軽に比較的短時間で読み終えることが出来ます。小川さんの文章は、綿密…

人格障害(クラスターB)の認知理論的な解釈

クラスターB(B群)……相互的な対人関係を築けない情緒不安定や依存性を特徴とし、自己の欲求や衝動を制御する良心や規範意識の乏しい群 境界性人格障害(borderline personality disorder) かつては、境界例と呼ばれ、精神病と神経症の中間領域にある人格傾…

人格障害(クラスターA)の認知理論的な解釈

心理学の概念としての『人格(personality)』とは、『個人を特徴づける継続的な特性の集合であり、個人に特有の一貫性のある思考・感情・行動・認知・対人関係のパターン』であると定義される。 その為、心理学及び精神医学の領域で、人格に言及する時には、…

抑うつスパイラルによる悪循環からの離脱の為の認知転換

認知療法の創始者であるアーロン・ベックが、うつ病の認知の三徴候(cognitive triad)と呼んだのは『自己に対する否定的な認知・世界に対する否定的な認知・将来に対する否定的な認知』でした。 以前(id:cosmo_sophy:20050119)、認知療法の理論による気分障害…

気分障害の下位分類としての気分変調障害と気分循環障害

うつ病(単極性障害)や躁うつ病(双極性障害)は一般的な病名として、現在、広く人口に膾炙しつつありますが、id:cosmo_sophy:20041216において、気分の異常な興奮や落ち込み、感情の不安定さを主訴とする病態の高次分類として気分障害を上げました。うつ病…