医学

『生命の救助と病気の治療』から『生命の選別と生死の判断』へと向かう医療:安楽と快適への流れ

自由主義社会の生命に関する倫理問題の多くは、出生前診断(マス・スクリーニング)や遺伝子治療、人工妊娠中絶、クローン人間産生、ES細胞の医療資源化など医療領域やバイオテクノロジーの領域で発生してくる。 生死に関わる問題や重篤な疾患の治療の機会…

病態の三段階とタイプA考察による自己の心身状態への気付きの重要性

人間の病気(疾患)の原因は、要素還元的に考えると、大きく以下の要因に分ける事が出来る。 遺伝的要因・先天的体質 化学物質、放射性物質による汚染・環境的要因・外部の有害刺激(ストレッサー) 性格・人格の特徴による思考・感情・行動のパターン 喫煙…

QOL概念が近代西洋医学に与えた影響とルネサンスの科学精神

医療行政、社会福祉、カウンセリング等の臨床心理学アプローチの目的は、20世紀半ば頃まで『量化可能な生活・健康の物質的水準の向上』に置かれていた。 その物質文明的価値観を変革する流れとして、功利主義に基づく“quantity of life”から全人的アプロー…

国民医療費の抑制の必要性と混合診療のメリットとデメリット

たかはしさんの示唆深いコメントを受けて、もう少し混合診療と医療財政の問題をまとめてみたいと思います。医療行政改革を考える際には、その改革によって“誰が”恩恵を受けるのかという視点が重要になってくると思います。 そして、その利害の絡まりあいは、…

日本とアメリカの医療保険制度と混合診療の問題

日本の医療保険制度や医療政策は、現在、数々の厳しい批判や叱責を受けているが、日本の医療制度や診療内容を、諸外国の医療の実際と比較すれば、医療機会均等の面を中心にして、世界で最高水準に近い医療が行われていると言えるのではないかと私は考えてい…

アリストテレスの生気論から機械論的自然観へ

『自然の全ての事物には、何か驚嘆すべきものがある。』と、博物学的な自然観察の書『動物誌』でアリストテレスが述べた様に、私達人間は自然界特に人間の生命に対して物理的・化学的な考察では解明出来ない神秘的で深遠な何か、例えば、魂だとか霊性だとか…

生命を存続させる巧妙な身体の仕組み:ホメオスタシス

ヨーロッパでは、ルネサンス期の神の支配からの離脱と科学的精神の高まりの中で、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452〜1519)の様に人体の解剖学的構造に興味を持つ進歩的な万能人が現れました。 レオナルド・ダ・ヴィンチは、画家や彫刻といった芸術家として非常…

自己内面に広がるミクロコスモスの不可思議

私たちは、人間を考える時、心身二元論の檻に囚われやすい。 例えば、キリスト教の霊性、仏教の仏性、プラトンの永遠不滅の魂(プシュケ)、機械論的自然観を持ち延長と思惟の二元論で世界を把握したデカルトなど悠久の思想・哲学・宗教の歴史は、精神を持つ…

個体の差異の多様性と種の生存可能性:科学技術の進歩と倫理

id:cosmo_sophy:20041129で、血液型性格判断(診断)について幾許かの私見を述べたが、前回の記事で白血病に触れたので白血球の型についても簡単に説明したい。 白血病の根本治療である骨髄移植が日本では有名であるが、臓器機能不全や先天性疾患や異常奇形…

血液型性格診断の類型論の決定論的問題

最近、テレビや雑誌を見ていると、『血液型性格診断』の文字をよく見かけます。 その内容のキャッチコピーを見ると、『相手の血液型を知れば、恋愛は上手くいく。顧客の趣味嗜好を血液型で知れば、仕事は成功する。あなたが人間関係で悩むのは、血液型の相性…

『痴呆』から『認知症』へ――行政用語の変更

痴呆の新呼称は「認知症」 厚労省、行政用語を変更 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041119-00000208-kyodo-soci痴呆に替わる呼称を検討していた厚生労働省の検討会は19日、「認知症」を新呼称にする方向で大筋合意した。来月に予定している検討会報…

サリドマイドの個人輸入急増。薬害多発国の日本。

Yahoo!ニュース−社会−毎日新聞 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041010-00000014-mai-soci 1950〜60年代にかけて世界的に薬害を起こした鎮静・催眠剤「サリドマイド」が、がんなどの治療目的で日本に個人輸入されている問題で、03年度の輸入量…

アレルギーと免疫系

アレルギーという言葉は、ギリシャ語の『奇妙な・風変わりな』という意味の『アロス』という単語と、『機能・反応』を意味する『エルゴン』という単語を組み合わせて作られ、それをドイツ語風に『アレルギー』と読むようになったものです。 アレルギーという…

バイオプロスペクティング

前回書いた自然の虫を用いた治療の様に、植物の根・茎・球根・種や動物の内臓・ホルモンなどを利用する自然界の生物多様性を利用した治療法が注目されている。 今まで、人工的に合成された化学的薬剤を用いる西洋医学が主流であった医療界では、作用機序が科…

不思議な効果を持つ治療用の虫

米国で「治療用うじ虫」の生産が倍増 http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20041005306.html今日の話題は、虫と聞くだけで背筋がゾゾゾーと来るような虫嫌いな方には不向きの話題ですが、ローテクな自然の虫を用いて難治の『壊死した傷口』を治…

活性酸素と疾病・老化の相関

活性酸素という言葉が、医療・健康や美容に関わる色々な場面でよく聞かれるようになりましたが活性酸素とは一体どういった化学物質でどういった特徴を持ち、どのような作用を私達に及ぼすのでしょうか。 一般的に、活性酸素というものは酸化力が極端に強力な…

遺伝子決定論の陥穽

先ほどの投稿で、神経伝達物質や生体ホルモンといった生物学的要因に人間の精神状態を還元することの間違いを指摘しましたが、それと同じように人間の健康・疾患や才能・能力といったものの全てを遺伝子に還元しようとする立場にも警戒が必要です。 嗅覚との…

ノーベル生理学・医学賞の記事と情報伝達物質の受容と影響

ノーベル生理学・医学賞に米アクセル教授とバック博士 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041004-00000011-yom-int スウェーデンのカロリンスカ研究所は4日、2004年のノーベル生理学・医学賞を米コロンビア大のリチャード・アクセル教授(58)と米…

アトピー性皮膚炎とステロイド外用剤

アトピー・ステロイド情報センター http://www.osk.3web.ne.jp/~medinet/about.html僕自身がアトピー性皮膚炎の苦悩の経験があることと、医学でも免疫学に強い関心を持っていることから、ステロイドの免疫抑制反応やアトピーの重症化・難治化との因果関係に…