政治

反日デモに内在する中国共産党の危機:共産主義は何故、挫折せざるを得ないか。

中国や韓国で連日繰り広げられた反日デモの原因には、中国の共産党独裁体制に対する人民の不満や反発の鬱積、日本の国連安全保障理事国加入への反対、中国側の内政的観点による人民のガス抜きなど幾つかの要因を考える事が出来る。 中国政府の見解では、日本…

NHKの受信料支払い拒否の増大と公共放送に求められるべきもの

NHK:受信料拒否・保留74万7000件 3月末で――毎日新聞 NHKの橋本元一会長は7日会見し、3月末で受信料の支払い拒否・保留件数が74万7000件に達したと発表した。「悲観的に考えざるを得ず、収支の均衡を目指し、予算執行を厳しく制御する…

ネグリ=ハート『<帝国>』の雑感3:差異化の欲望に駆動された近代化プロセスが実現したものと疎外したもの

著作:『 グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』 著者:アントニオ・ネグリ,マイケル・ハート 訳者:水嶋 一憲,酒井 隆史,浜 邦彦,吉田俊実 出版社:以文社 ネットワーク化された政治的主体性であり、無数の変数によって規定される権力の諸関係…

グローバリゼーションの光景:ポストコロニアリズム・生産の脱中心化・経済社会の規律性

アントニオ・ネグリとマイケル・ハートの『帝国』において描かれるグローバル化された世界の光景とは、アメリカの軍事的ヘゲモニーを始点として進行する経済的・社会的なスタンダード化によって眼前に開かれてくる。 それによって、軍事力による世界秩序であ…

現代における“正義の戦争”と“戦争の日常化”による倫理の頽落

確かに、現代の流動的で多様性に満ちた国内社会や国際社会の環境下にあっては、インマヌエル・カントの『汝の人格及びあらゆる他者の人格における人間性を常に同時に“目的”として取り扱い、決して単に手段としてのみ取り扱う事のないように行為せよ』という…

ネグリ=ハート『<帝国>』の雑感2:グローバリゼーションの世界秩序と近代国民国家の誕生

著作:『 グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』 著者:アントニオ・ネグリ,マイケル・ハート 訳者:水嶋 一憲,酒井 隆史,浜 邦彦,吉田俊実 出版社:以文社 ネグリは著作『』において、現代のグローバル社会は、表層的な無秩序と混沌の背景に、…

ネグリ=ハート『』の雑感:現代世界のグローバリズムと関係性のネットワークとしての

著作:『 グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』 著者:アントニオ・ネグリ,マイケル・ハート 訳者:水嶋 一憲,酒井 隆史,浜 邦彦,吉田俊実 出版社:以文社 1989年に、資本主義と社会主義のイデオロギー対立の象徴であった東西ドイツを隔ててい…

ニ期目のブッシュ政権始動とアメリカ・日本の市場経済戦略

1月20日、アメリカのブッシュ大統領の政権2期目が、“世界秩序を維持する強いアメリカ”を前面に打ち出したワシントンでの就任演説と共に始動する事となりました。 現代の国際社会において、ブッシュが国民から民主的選挙を通して任命されたアメリカ合衆国…

ジェフリー・ディーヴァー『石の猿』:毛沢東の独裁体制とルサンチマンの独善的支配欲求

id:cosmo_sophy:20050106,id:cosmo_sophy:20050108において、ジェフリー・ディーヴァー『石の猿』の概略と感想を記した際に、毛沢東時代の中国共産主義の暗黒面である『大躍進と文化大革命』について軽く触れたが、その暗黒こそがこの小説の敵役である蛇頭幹…

ゲマインシャフトからゲゼルシャフトへの移行と共同性の衰退

人間の精神は基本的性向として、普遍的な真理や絶対的な価値への志向を持っているように思われてきた。 私達は、長い歴史の過程から固定的で強制的な価値が絶対化する危険を学習した結果、文化多元主義や価値相対主義の視座を獲得した。 私は、文化多元主義…

イラク国民議会選挙:汎アラブ主義(Pan-Arabism)の挫折とイスラム原理主義の台頭

ビンラディン容疑者:イラク選挙ボイコットを呼び掛け http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20041228k0000e030001000c.html 中東の衛星テレビ、アルジャジーラは27日夜、国際テロ組織アルカイダの指導者、ウサマ・ビンラディン容疑者の声とされる声…

社会性昆虫のアリ社会の遺伝子による完全なる統制と遺伝子の呪縛を離れたヒト

情報技術の飛躍的なイノベーション、所謂、情報革命が『創発』の可能性を切り開いたというのは、ブログや個人サイトを含めた情報発信能力の分散と趣味の多様化によるコミュニティの細分化が大きな要素として機能しているという事だろう。 特に、インターネッ…

ised@glocomとサイバー空間における民主主義の可能性

ised@glocom http://ised.glocom.jp/ised/少し前に、多くのブログで引用され、有意義な議論や興味深い評論が為されていたised@glocomの『情報社会の倫理と設計についての学際的研究』ですが、その内容の分量が膨大な事もあって、簡単に目を通しただけで終わ…

田代まさし被告の公判:プライバシーの権利と性嗜好障害

田代まさし被告:第2回公判 http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20041218k0000m040113000c.html 覚せい剤取締法違反(所持、使用)などに問われた元タレントで無職、田代まさし被告(48)=本名・田代政=の第2回公判が17日、東京地裁(…

税制改革と増税による財政赤字削減

かなり長い記事だが、税金の納付と社会保障の給付の収支バランスを考える際のレファランスとして『税制改正大綱』を貼り付けておく。 少子高齢化が継続的に進行する社会保障基盤が安定しない情況であり、女性特殊出生率の急速な低下と未婚化晩婚化、若年層の…

中華人民共和国の成立の歴史と政治体制の変遷について

私たちが、日常的に中国と呼び習わしている国は、漢字名での正式名称を『中華人民共和国』と言い、国際的な正式名称では『People's Republic of China:PRC,China』*1と呼ばれる。 漢民族が総人口の92%を占めるが、その他にも約55の多数の少数民族を国内…

日中関係と靖国神社参拝問題

毎日新聞 日中首脳会談:靖国参拝明言せず 外相会談で事前に確約 http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20041128k0000m010115000c.html チリで18日に行われた日中外相会談で、町村信孝外相が李肇星外相に対し、「小泉純一郎首相は記者団に対す…

ネオリベラリズムと竹中平蔵:自由競争原理と経済格差

経済成長を最大の目的とし、市場原理と自由競争に基づく市場経済のメカニズムに信頼を寄せるネオリベラリズムは、経済的自由を最大限に尊重します。 経済的成功者でない人たちの抱くネオリベラリズムの大きな問題点や不信の一つと考えられるのは、経済成長と…

リベラリズムの定義の変遷と社民主義

junp_mさんからのコメントを頂いてリベラリズムについて少し考えたのでメモを残しておきます。国家の市場介入や再分配を否定する経済的な自由や個人的な価値観に基づく愚行や思想信条など精神的な自由を最大限尊重するリバタリアニズムの立場がありますが、…

保守的な現実感覚と革新的な理想願望:現状肯定と否定の狭間で揺れる政治

id:cosmo_sophy:20041120で、ハーバーマスの政治思想を語る文脈で『右翼左翼の対立軸』について触れました。 現代社会の政治を語るに当たって、不必要な迄のイデオロギー的主張や宣伝は余り説得力を持ちませんが、『保守と革新・現状肯定と現状否定・現実的…

民主主義思想と政治参加する市民(citizen)について

民主主義とは、政治的な意志決定方法に関する『政治思想』であると同時に、共同体とその共同体に属する個人である市民(citizen)の政治的なあり方を規定する『政治形態』である。 民主主義政体においては、『国民主権・主権在民』が前提であると学校の公民の…

ファルージャ総攻撃とアメリカの大統領選挙に垣間見る人種差別

ブッシュ大統領が大統領選挙で再選された事で、対イラクの統治政策と復興支援は現在までの路線を継続することとなり、テロリスト集団への積極的な攻撃方針も踏襲され『テロとの戦争』は新たな拡大局面を迎える事となった。 共和党ブッシュが標榜するのは、『…

民主主義政体における主権者意識の低下

民主主義国家における議会政治のシステムと、古代ギリシア的なポリス市民による直接民主制から代議員による間接民主制への移行とその功罪を考えていました。 そもそも、選挙によって国民の代表者である政治家や国家元首(大統領・指導者)を選出することの意…

アメリカ大統領選挙・ブッシュ再選決まる

米大統領選:ブッシュ氏が再選決める ケリー氏が敗北宣言 ―毎日新聞―http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20041104k0000m030128000c.html 【ワシントン佐藤千矢子】米大統領選は2日、投開票が行われ、AP通信などによると、3日未明(日本時間同夜)…

郵政三事業民営化の妥協的着地点

郵政事業とは、『郵便事業』『郵便貯金』『簡易保険』の三事業からなり、物流サービス業の郵便事業と窓口ネットワーク、公的な金融事業の郵便貯金、簡易保険の二つに大きく分けられる。物流サービス業としての郵政公社のネットワークは、全国津々浦々まで広…

『政治とカネ』の問題と派閥政治の衰退

昨今、話題に上る事の多い『政治とカネ』の問題とは、今まで日本政治において暗黙の了解としてあった『金権政治・利権政治・派閥政治・陳情政治』などの総体である。 それらは、田中角栄によって日本列島改造論が高々と提唱された社会インフラ基盤が未整備な…

対談集『国家と戦争』を読んでの雑感

数年前に入手して積読していた座談集『国家と戦争』 飛鳥新社(ISBN:4870313715)を読んだ。漫画家・小林よしのり、評論家・西部邁、作家・福田和也、政治学者・佐伯啓思の対談集である。 どの方も相当に癖のある人物として知られていて、好きな人は好き、嫌い…

アメリカ大統領選に寄せて

前述したような社会保障政策を巡っての論争が、大統領選挙を11月に控えたアメリカでも活発に行われています。 共和党のブッシュは、新自由主義者らしく市場経済のメカニズムに全幅の信頼を寄せて、社会保障給付は最低限のラインに抑えたい考えを持ち、民主…

社会保障費増大の問題と保守・リベラルの対立

毎日新聞 ―医療― 社会保障給付:2100年推計は506兆円 制度持続は? http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/medical/news/20041015k0000m040077000c.html 三菱総合研究所は14日、約100年後の2100年段階で年金・医療・介護の社会保障給付費が…

シーパワーとランドパワーの外交戦略特性

前回は、シーパワーである日本が重視すべき交通路について書きましたが、今回は海洋国家と陸上国家の外交方略の特徴について大雑把に考えてみます。 ランドパワー(陸上国家)とは、海から切り離された大陸内部や半島内部、砂漠地帯、山岳地帯を生活拠点とし…