小林秀雄『本居宣長』

小林秀雄の文庫版『本居宣長』を暇を見つけて読みながら、日本の古典文学が様々な角度から照射する日本的精神の美しさや奥深さに心を揺り動かされています。
しかし、古典の文体を長らく読み込んでいない為、この本をすらすらと読み進めることはなかなか困難で、適当に読んでは大意を掴み損ねて、また前の文章に戻って読み直したりしています。

紫式部の『源氏物語』などは、10年以上目にしたことがないのですが、いつか再び夢幻と情愛が織り成す魅惑の宮廷文学の中に、日本的な情趣を直観的な“あはれ”として、理性以前の自然に溶け込む“ことわり(理)”として再発見したいと思います。
近代以降の分析的な心理学や理性と欲求を切り離す精神分析などとは位相の異なる心理世界の生活文脈に徹した直知的探求こそが源氏物語や和歌の世界の本義ではないかと感じます。