遺伝子組み換え

Yahoo!ニュース―社会―
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040726-00000033-kyodo-soci

フランス南部トゥールーズで、環境保護政党やジョゼ・ボベという指導者が中心となって、研究用の遺伝子組み換えのトウモロコシを引き抜いて抗議したそうだ。

遺伝子組み換え食物の問題には大きく二つの観点があると僕は考えている。一つは、『人間の健康に与える影響』であり、もう一つは『生態系の秩序に与える影響』である。
前者、人間の健康に与える影響については、多くの生物学者や遺伝学者は『心配ない』と主張していて、その根拠は遺伝子や遺伝子の働きによって産生されるアミノ酸やタンパク質は消化されるからというものだ。

その根拠が有効である為には、『新たな遺伝子を組み込む前の食物の安全性』が確立されていることと『遺伝子組み換えで出来た食物の成分検査』を行うことが欠かせない。もちろん、市場に出回っている遺伝子組み換え食物には全て厳しい成分検査が行われているとされている。
厚生労働省の安全検査、成分検査、消化可能検査を信頼する限りにおいては、遺伝子組み換え食物に危険性はないと言えます。

えっ、毎度、問題を起こしている厚生労働省が実施する検査が本当に厳格に実施されていて、業者や専門家が誠実に検査結果を報告しているか信じられないですって(苦笑)・・・確かに、全ての物事に対して絶対確実、絶対安全とはいえませんから、そういう疑念や懸念が強い人は無理せずに『遺伝子組み換え食物は使用していません』と明示している食品・加工品を購入なさることをお薦めします。それが嘘だった場合は、うーん、回避しようがありません。企業倫理を高める努力を企業のみなさんは怠ってはいけないという事ですね。
そして、数十年が経てば、遺伝子組み換え食物を食べ続けた人にどのような変化があるのかあるいはないのかを確かめる事で、実証的な臨床検査が自然と出来る事になります。

ただ、理論的な思考に基づけば、タンパク質は胃腸によってアミノ酸や小さな分子に分解されて、再び自分の遺伝子の指令によってタンパク質に再合成されて血肉になったり、骨になったり、栄養になったりします。
遺伝子組み換え食物そのものが過去からずっと人間に食べられてきている食物であり、その遺伝子組み換え食物から有害・有毒な成分が検出されず、胃酸を中心とする消化酵素(アミラーゼとかリパーゼとか)で消化されるタンパク質・成分である事が確認されれば、理論的には人間の健康に与える悪い影響はないと判断することは出来ます。
それでもなお不安だ、危険性があるかもしれないと考える気持ちは心情的には理解できます。そして、それは自然の食物が安全で最高という価値観に基づいていて、人工の技術によって制作された食物は自然よりも劣ると考えている事でもあります。

自然である事、自然の摂理に従って生きる事を善いと考えるならば、確かにバイオテクノロジーや先端医療技術は自然の摂理に逆らったり、改変しようとしていますから悪い事となるでしょう。
それは個人の価値観の自由だと思います。

バイオテクノロジーの一つである遺伝子組み換え食物というのは、極端に合理化した技術であり、改良にかかる時間や手間を省略した品種改良という事が出来るでしょう。
バイテクにしても、品種改良にしても、その目的は、『安全性の上昇・美味しさの上昇・収穫量の増加・生態系への適応』であるべきだと思います。

しかし、一番、懸念されるのは人間の健康への影響よりも『自然界の食物連鎖による生態系の秩序への悪影響』です。これは、害虫が決してつかない遺伝子組み換え食物や病気に絶対かからない遺伝子組み換え食物、外敵が極端に少なくなる遺伝子組み換え食物を作ることで起こってくる事になります。
今まで、その食物を食べる事で生存を維持していた昆虫や動物がその食物を食べられなくなる事で、著しく数を減少させた場合、その虫や小動物を食べていた上位の階層の動物や虫たちも数が減ったり絶滅したりします。
人間だけしか食べられない食物といった形で植物の遺伝子を改変して組み替えることは、最終的には生態系全体のバランスを崩す恐れがないとは言えません。
それでも、人間が必要な家畜だけは確保して牧畜をすればいいという考え方もあるでしょうが、やはり、自然に生きる野生動物の生存を無視したバイテクや自然破壊につながる開発は出来るだけ少なくしたほうが良いという価値観にも一理あると思います。それは、野生動物たちの利益だけではなく、最終的に人間が生存可能な地球環境を維持していくことにも貢献する可能性が多いにありますから。

遺伝子組み換え食物は、今後、ますます私達の日常生活に意図せずして多く入り込んでくる事でしょう。
その人間に対する安全性と自然環境へ与える影響について、僕たちは厳しい監視と評価の眼を向けると共に、正しく監視できる為の正しい科学知識を持つように努力していかなければならないと思います。

少し前にサントリーがバイテクで作った綺麗な青い薔薇がありましたが、こういう技術利用にも賛否がありますね。
僕個人としては、単純に今まで見た事のない色合いの美しい薔薇に見とれてしまいましたし、観賞用植物で他生物に害のない種であれば青い薔薇のような試みは面白いと思いました。