2004-11-01から1ヶ月間の記事一覧

日中関係と靖国神社参拝問題

毎日新聞 日中首脳会談:靖国参拝明言せず 外相会談で事前に確約 http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20041128k0000m010115000c.html チリで18日に行われた日中外相会談で、町村信孝外相が李肇星外相に対し、「小泉純一郎首相は記者団に対す…

『性格決めつけ』の血液型番組への抗議

毎日新聞 ―テレビ―血液型番組:「性格決めつけ」視聴者から抗議相次ぐ http://www.mainichi-msn.co.jp/geinou/tv/news/20041127k0000e040065000c.html血液型による性格判断を扱うテレビ番組が、今春から増えている。特定の血液型を「いい加減な性格の持ち主…

血液型性格診断の類型論の決定論的問題

最近、テレビや雑誌を見ていると、『血液型性格診断』の文字をよく見かけます。 その内容のキャッチコピーを見ると、『相手の血液型を知れば、恋愛は上手くいく。顧客の趣味嗜好を血液型で知れば、仕事は成功する。あなたが人間関係で悩むのは、血液型の相性…

『ひき裂かれた自己』レイン:内的世界の相互干渉と他者性

統合失調症(精神分裂病)にまつわる誤解や偏見は実に基本的な部分にある事が多い。 過去の記事id:cosmo_sophy:20041109に書いたように、精神分裂病という名称から生じた間違った認識として『精神機能の分裂を人格の分裂と崩壊』に置き換えて考えてしまう事…

ネオリベラリズムと竹中平蔵:自由競争原理と経済格差

経済成長を最大の目的とし、市場原理と自由競争に基づく市場経済のメカニズムに信頼を寄せるネオリベラリズムは、経済的自由を最大限に尊重します。 経済的成功者でない人たちの抱くネオリベラリズムの大きな問題点や不信の一つと考えられるのは、経済成長と…

フーコーの関係的な権力作用に抗したレインの反精神医学

id:cosmo_sophy:20041109の記事に関連する一連の流れの中で、19世紀末〜20世紀初頭のクレペリンの早発性痴呆(1899年)やブロイラーの精神分裂病(1911年)などを振り返って、精神疾患概念の定義と整理の歴史を見てきました。 不治の病とされていた統合失調…

リベラリズムの定義の変遷と社民主義

junp_mさんからのコメントを頂いてリベラリズムについて少し考えたのでメモを残しておきます。国家の市場介入や再分配を否定する経済的な自由や個人的な価値観に基づく愚行や思想信条など精神的な自由を最大限尊重するリバタリアニズムの立場がありますが、…

保守的な現実感覚と革新的な理想願望:現状肯定と否定の狭間で揺れる政治

id:cosmo_sophy:20041120で、ハーバーマスの政治思想を語る文脈で『右翼左翼の対立軸』について触れました。 現代社会の政治を語るに当たって、不必要な迄のイデオロギー的主張や宣伝は余り説得力を持ちませんが、『保守と革新・現状肯定と現状否定・現実的…

クローン人間産生問題

条約を断念、宣言採択へ クローン禁止で国連 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041120-00000048-kyodo-int クローン禁止条約をめぐり協議を続けてきた国連総会の第6委員会は会期最終日の19日、全面禁止、部分禁止両派の対立が続く国際条約の策定を断…

『痴呆』から『認知症』へ――行政用語の変更

痴呆の新呼称は「認知症」 厚労省、行政用語を変更 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041119-00000208-kyodo-soci痴呆に替わる呼称を検討していた厚生労働省の検討会は19日、「認知症」を新呼称にする方向で大筋合意した。来月に予定している検討会報…

ドストエフスキー『美』を語りき。。。

id:cosmo_sophy:20041122で、完全無欠の美のイデアへの憧憬をプラトンのイデアとして語ったが、ロシアの大家ドストエフスキーは美を畏怖すべき掴み所のないものとして語っている。 美―――美という奴は恐ろしいおっかないもんだよ!つまり、杓子定規に決める事…

性愛と恋愛を取り巻く科学的なリビドーと文学的なエロス

フロイトの精神分析学体系の基盤には、性欲を駆動するリビドーがあります。 リビドーに関する一般心理学書には時々、『リビドー=性欲』という短絡的で誤解を招く記述がありますが、リビドーは私たちが日常生活の文脈で語る『心理的な異性(同性)とのセック…

自然界の偶然性と必然性が織り成す進化現象

チャールズ・ダーウィンの『種の起源』(1859)により、自然界に生きる生物の形質の適応的変化を研究する科学的な進化論が幕を開けた。 『進化(evolution)』は、その訳語の選定の影響もあって、前進向上(improvement,advancement)や進歩発展(development,progr…

第20回京都賞開催に際して雑感・ハーバーマスの受賞

京セラの創設者・稲盛和夫が理事長を務める稲盛財団は、人類の文明・科学の進歩発展及び精神的な深化探求に貢献した学者・研究者に『京都賞』という国際的評価も高い学術賞を贈呈しているのだが、その歴代の受賞者の顔ぶれは壮観で優秀な研究者でありながら…

未開部族社会における死から再生するイニシエーションとその意義の衰退

イニシエーション(initiation)*1と言う言葉が日本で有名になったのは、皮肉な事にオウム真理教の地下鉄サリン事件を始めとする一連の犯罪報道を通じてであった。 その余りにも異様な集団と反社会的な教義の影響から抜け出せない後遺症なのだろうか、一般の人…

精神分析学の転移概念と分析的関係の距離感

id:cosmo_sophy:20041110の記事で、精神分析やカウンセリングの治療的面接の場面において生起する『転移(transference)と逆転移の概念』*1について簡略な説明をした。転移とは、クライエントの過去の記憶に痕跡を残している強烈な満たされない感情の向かう先…

対人関係の苦悩や葛藤:創造的な人生の豊かさを演出する対人関係への変容

あなたには、現在、自分を苦しめている悩みや解決の困難な問題、耐え難い苦悩を生じる事態がありますか? 人間の苦悩や不安、更には、悲しみ、苛立ち、焦燥感、憂鬱感などは総じて『心理的問題』であると同時に『関係的問題』です。 私の抱える悩みや苦しみ…

ぷちナショナリズム症候群のサマリー感想とエディプス・コンプレックス

ぷちナショナリズム症候群のサマリー http://homepage1.nifty.com/nuka/kasetu/siryo/0212/putinasyo.html 精神科医・香山リカの著書に『ぷちナショナリズム症候群〜若者たちのニッポン主義』があり、未読だがサマリーがあったので読んでみました。 序章 「…

マグナ・グレキアを実現したギリシア人の歴史

民主主義思想と民主政治について、縷々と取り留めなく書き連ねてきましたが、民主主義の原点を遡れば、アリストテレス(B.C.384-B.C.322)*1のアテナイの政治体制に関する記述を読む事になるでしょう。*2古代ギリシア世界のアテナイのギリシア人*3による民主政…

民主主義思想と政治参加する市民(citizen)について

民主主義とは、政治的な意志決定方法に関する『政治思想』であると同時に、共同体とその共同体に属する個人である市民(citizen)の政治的なあり方を規定する『政治形態』である。 民主主義政体においては、『国民主権・主権在民』が前提であると学校の公民の…

ケインズ的政策と資本主義経済の発展度

現代のマクロな市場経済は、景気循環論に示されるような周期的に訪れる不景気・インフレ・デフレの危険と長期的観点での恐慌発生の可能性といった不安定さを抱えている。 20世紀後半の主流だったケインズ経済学は、そういった市場経済の欠点を公共事業を中…

生命の価値判断と脳機能中心の人間観

id:cosmo_sophy:20040923で、バイオエシックスの話題に少し触れましたが、バイオエシックス=生命倫理学は、生物学と倫理学を架橋する学問分野であり、『不可侵の生命の尊厳』や『人間の科学技術による生命の人為的操作の是非』について倫理的に考察を進める…

ファルージャ総攻撃とアメリカの大統領選挙に垣間見る人種差別

ブッシュ大統領が大統領選挙で再選された事で、対イラクの統治政策と復興支援は現在までの路線を継続することとなり、テロリスト集団への積極的な攻撃方針も踏襲され『テロとの戦争』は新たな拡大局面を迎える事となった。 共和党ブッシュが標榜するのは、『…

ブロイラーの精神分裂病概念の発展とボーダーラインの出現

前回、クレペリンが早発性痴呆(Dementia praecox)の疾病単位を確立して、それまで曖昧模糊としていた症候群から躁鬱病と統合失調症という『二大内因性精神病』を析出した事を見てきました。 内因性は、先天的・後天的な身体的原因が想定されるが原因を特定…

クレペリンによる精神医学の体系化と早発性痴呆の疾病概念

精神分裂病*1の名称の歴史は、オイゲン・ブロイラー(Bleuler,E. 1857〜1937)が1911年に『Schizophrenie:精神分裂病』の精神疾患概念の提示をした事とその邦訳(日本語訳)に始まります。 “Schizo”は『分裂』を意味し、“phrenie”は『魂・精神・息吹』を意味…

アメリカと日本の関係。幕末史を振り返りながら。

現在、蜜月関係にあるアメリカ合衆国と日本国の初めての出会いは、『太平の 眠りを覚ます 上喜撰 たった4杯で 夜も眠れず』の有名な狂歌に表現されるように驚愕と恐怖を伴う屈辱的な出会いでした。 強力な軍事力の象徴である蒸気機関で動く軍艦黒船*1を従え…

民主主義政体における主権者意識の低下

民主主義国家における議会政治のシステムと、古代ギリシア的なポリス市民による直接民主制から代議員による間接民主制への移行とその功罪を考えていました。 そもそも、選挙によって国民の代表者である政治家や国家元首(大統領・指導者)を選出することの意…

アメリカ大統領選挙・ブッシュ再選決まる

米大統領選:ブッシュ氏が再選決める ケリー氏が敗北宣言 ―毎日新聞―http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20041104k0000m030128000c.html 【ワシントン佐藤千矢子】米大統領選は2日、投開票が行われ、AP通信などによると、3日未明(日本時間同夜)…

IMF(国際通貨基金)誕生とブレトンウッズ体制の崩壊

開発途上国への資金援助や新興市場国への政策助言などをして世界の経済状況を安定化させ調整しようとするIMF(International Monetary Fund:国際通貨基金)の経済介入政策の問題点については、id:cosmo_sophy:20041003に触れましたが、今回はIMF誕生…

精神病理学のデファクトスタンダードとしてのアメリカ発DSM―Ⅳ

id:cosmo_sophy:20041101の記述で、フロイトの精神分析理論における精神病(統合失調症)の位置付けを大まかに略述した。 伝統的な精神分析では、精神病と神経症の区別を『現実検討能力・現実吟味能力』の有無と『主訴である症状の苦悩や内容について健常者…