『プラハの春』 春江一也 著 を読んで

プラハの春』 春江一也著 ISBN:408747173x

を2ヶ月前から読んでいてようやく上下巻を今日読了した。
1967年に、ワルシャワ条約機構で結束した共産主義圏に所属するチェコスロバキアで起きた政治的抑圧に抵抗する自由化と民主化の運動『プラハの春』を日本の外交官・堀江亮介からの視点で描いた小説。

共産主義体制化にあるチェコスロバキアでの政治・経済の改革運動『プラハの春』と、その改革運動を妨害しようとする独裁的なソ連を基軸とする東欧共産主義諸国との国際外交を取り扱う硬派な政治小説の側面と、日本大使館の外交官・堀江と東ドイツDDRの反体制活動家カテリーナ・グレーベとの禁断の愛を描く国際恋愛小説の側面とがあってなかなか面白い小説でした。
しかし、文体が硬質で行政の公式文書のような表現が続く部分も多いので、一般的な小説のようにさらさらとは読み難い小説なので一気に読みきるのは大変かもしれません。

自らの国家と民族を強く愛し、独立心の旺盛なチェコスロバキアの人々が、強大で圧倒的な軍事力を持つソ連内政干渉をどうにかして阻止しようと苦心惨憺している姿は感動的です。
ナチスによる苛酷な侵略と支配を退けた後には、ソビエト連邦によるイデオロギーの強制と内政干渉の苦難がチェコスロバキアには待っていたわけですが、そういった歴史を経てなお力強く生きるチェコ及びスロバキアの人々には崇高ささえ感じます。

時間のある時に、チェコスロバキアの歴史と民族についてまたいろいろと調べてみたいと思わされました。