人種ジェノサイドと対比する階級ジェノサイド

この間、ナチスドイツの人道に対する罪について少し書いたが、ナチスユダヤ人やロマ(ジプシー)など特定の集団を絶滅しようとしたジェノサイド(虐殺)についてもフランスの新刑法典では規定されている。

『ある民族的・種族的(エスニック)・人種的または宗教的な集団あるいはなんらか他の基準で特定された集団の、完全ないし部分的な絶滅を意図して立てられたある計画を実行に移したもの』をジェノサイドという。
また、イラクの独裁者フセインクルド人化学兵器サリンで毒殺したり、中国共産党チベット民族を軍事侵略して虐殺したりしたような案件を、『特定民族の全体的ないし部分的な絶滅=浄化』としてエスニック・クレンジングという事もあります。

ナチスフセイン政権の虐殺は『人種ジェノサイド』ですが、もう一つ歴史的な虐殺としてソ連中国共産党カンボジアクメール・ルージュなどによって行われた『階級ジェノサイド』と呼ばれる虐殺があります。
階級ジェノサイドというのは、共産主義思想の革命理論における基本原理『資本家(ブルジョア)階級と労働者(プロレタリアート)階級の階級闘争の帰結』として行われたものです。
歴史上発生した共産主義革命の問題点は、イデオロギーに基づく人工的かつ実験的な革命である為に『革命勃発時の粛清』だけではなく『革命後の体制下での虐殺が常態化』したところでしょう。

階級ジェノサイドの例としては、ソ連で行なわれた『クラーク(富農)の階級としての絶滅政策』やカンボジアで行われた弁護士・医師・教員などの都会部の知識人階級の強制移住と強制労働などがあります。共産主義体制下ではある民族集団の強制移住が頻繁に行われ、革命の指導者が絶対化されたり神格化されたりして、『平等な人民』『支配からの解放』『言論・思想・表現の自由』といったものがことごとく抑圧されてしまうという欠陥がありました。

こういった暗黒の虐殺の歴史が、共産主義体制にあることで、思想としてのマルクスや左派も批判されやすいのですが、社会民主主義的な福祉政策に転化された共産主義的発想には見るべきところもあると思います。
また、時間がある時にマルクスの思想や経済学などについても書いていきたい。