ケインジアンの時代は終焉したか?

現在のマクロ経済学の主流は新古典派経済学であるが、ケインズ経済学あるいはミクロ経済学の個人の合理的な経済活動によって基礎付けられた新ケインズ派の理論も大きな対立軸として存在している。
いや、一部の経済学者にとってはジョン・メイナード・ケインズはもう過去の人であり、経済学の主流からはドロップアウトしている存在として扱われているので新古典派
ケインズ革命は挫折し、ケインズ公共投資による有効需要創出の不況解決策(景気浮揚策)は最早経済政策としての有効性を失っているというが、私は完全にケインズの理論が間違っているとは思わない。
勿論、それと同程度に新古典派や期待形成学派などの理論も説得力があるし、まだまだ知らない事柄が多いのでこれから機会を見つけて経済学の入門書や解説書にも目を通していきたい。

ケインズの代表的著書『雇用・利子および貨幣に関する一般理論』を過去に何度か読んだが、内容はなかなか難解で理論的な概略は把握できても数式のモデルなど細部まで完全に理解できたとは言い難い。
ケインズ経済学についての総括とまではいかなくても自分なりの整理をしてまとめてみたい思いはあるのだが、邦訳とはいえ原書を再読する労には堪えられそうにもないかな・・。

そして最近、本屋をぶらぶらと歩いて経済書のコーナーを何気なく渉猟してみると、面白そうなマクロ経済学の本が沢山あってケインズより先にそちらを読みたい誘惑にかられる。どれも結構な値段がするので、仕事に時間的な余裕ができたら何冊かまとめて図書館で借りてもいいなと考えている。
2001年にノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツだとか山形浩生がよく翻訳しているポール・クルーグマンだとか倫理学と経済学との架橋をしたとされるアマルティア・センだとかを筆頭に有象無象の著者による書籍がひしめいている。

特に、社会的選択理論を提唱して、公共経済学者あるいは厚生経済学者として倫理的な経済システムの在り方を模索するアマルティア・センの著作には、タイトルだけを見ても食指をそそられるものが多い。『正義論』のロールズの公正概念との関係で読み進めても面白そうである。


『経済学の再生―道徳哲学への回帰』 ISBN:4892054488

『不平等の再検討―潜在能力と自由』 不平等の再検討―潜在能力と自由

『貧困と飢饉』 ISBN:4000019244

『集合的選択と社会的厚生』 ISBN:4326501863  

アイデンティティに先行する理性』 ISBN:4907654448

最後にケインズ経済学に関する批判的な解説書である

ケインズの『一般理論』を読む』入江雄吉 著 ISBN:4569624995

そして、ケインズ経済学の正統派的入門書として、

ケインズ革命マクロ経済学』鈴木康夫 著 ISBN:4812203015

ケインズ経済学と失業・所得分配 マクロ理論とミクロ理論の相互基礎づけ』渡辺弘 著 ISBN:4771012148

も一読する必要を感じる。


ケインジアンに私が説得力を感じるのは、自由市場経済のメカニズムを万能視して安心するだけではなくて、積極的な政府による金融財政の政策によって実践的な不況の処方箋を描けるところにあるのかもしれない。
とはいえ、元々、哲学や倫理学に強い興味をもってその周辺の読書を重ねているので、アマルティア・センへの誘惑も断ち切りがたいのだ。
更には、国際経済特にグローバリズムの功罪を吟味する為にはスティグリッツの書籍も読まなくてはいけない気もする。まぁ、『読まなければならない』とする読む義務があるわけではなく読む欲求があるというのが正しい表現ではあるが。