活性酸素と疾病・老化の相関

活性酸素という言葉が、医療・健康や美容に関わる色々な場面でよく聞かれるようになりましたが活性酸素とは一体どういった化学物質でどういった特徴を持ち、どのような作用を私達に及ぼすのでしょうか。
一般的に、活性酸素というものは酸化力が極端に強力な酸素であり『人体に対して有害な老化を促進するもの』と認識されています。活性酸素は、フリーラジカルといった名称で呼ばれることもあります。

活性酸素の有毒性・有害性を強く意識している研究者の中には、『癌、動脈硬化、脳血栓、心臓病、アトピー性皮膚炎、糖尿病など』をはじめとする人間の罹患する疾患・障害の約90%に活性酸素が何らかの形で関与していると考えている。
病気以外にもシミ・シワ・そばかすなどの肌トラブルなど美容的な問題の原因としても活性酸素は悪い働きをする。
そうした活性酸素の有毒性を重視する人の中には、病気の根本原因に活性酸素濃度の上昇があるとする説もあるようである。
ただし、『活性酸素病因論』は、正当な科学的実験と検証を対照群をとって実施して得た結果に基づくものではないので、擬似科学的な部分もある。完全に活性酸素だけが病気の原因であるというような盲信に陥らずに、面白い一つの医学的テーマとして聞くのがいいでしょう。

しかし、活性酸素が完全な毒物というわけではない。それは、水道水の消毒に使われる塩素がその濃度によって殺菌に使われたり、致死性のある劇薬になったりするのと同じ原理である。
とはいえ、水道水に混入される塩素の起炎症作用が、現代のアトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚疾患の原因(塩素による角質層の表皮細胞破壊による過敏なドライスキンの形成。ドライスキンの悪化によるバリア機能障害とアレルギー反応)となっているとする説もあるので、塩素は非常に取り扱いに慎重を要するものともいえます。現在の日本の水道水に使用されている殺菌の為の塩素濃度は、先進各国でも飛びぬけて高い濃度にあり、身体特に皮膚に対して有害性がある可能性が高いという報告もあります。

活性酸素も塩素と同じようにその濃度が適切であれば、人体に必要な免疫系の働きを活性化して、体内に侵入する細菌・ウイルス・カビなど菌類の胞子から身体を守る殺菌作用を発揮します。
私達が意識すべきなのは、どうやれば、活性酸素濃度を健康維持に適切な水準に保つことが出来るのか、どのようにして正常な細胞やDNAを損傷しない濃度を維持していけるのかという事になります。

日常生活の中で比較的簡単に実行できる活性酸素対策としては、『抗酸化食品の積極的摂取』があります。
ビタミン・ミネラルを豊富に含む野菜・海藻など植物性栄養素が主要な抗酸化食品ですが、その他にも南アフリカ原産のフラボノイドとミネラルが多いとされるルイボスティーなどにも抗酸化作用(美容関連で紹介される事が多いお茶でもあります)があるようです。
他にも、ドラッグストアなどで一般に市販されている抗酸化食品やサプリメントもあると思いますので、抗酸化食品に興味のある方は薬剤師などに聞いてみるといいでしょう。サプリメントでは、ビタミンC、ビタミンEなどを主成分とする複合型サプリメントが効果的だと言われます。

普通の酸素分子O2は、原子核の周囲にある電子2個がペアになって安定しているのですが、活性酸素分子では、原子核の周囲にある電子が不対電子となって不安定な状態になります。
その不安定な電子の結合や水素との結合の状態によって、活性酸素は『スーパーオキシド・一重項酸素・過酸化水素H2O2・ヒドロキシラシカル』の4種類に分類されます。
スーパーオキシドは最もありふれたポピュラーな活性酸素でその毒性も中程度ですが、紫外線の照射によって発生することの多い一重項酸素(三重項酸素)は反応性が高く皮下組織で真皮細胞を破壊したりする有害性があると言われます。
過酸化水素は強い殺菌作用があり、一般的な消毒オキシドールといわれるものがこれに当たります。勿論、細菌や真菌を殺す作用があるのですから、長期間皮膚を過酸化水素につけると健康な皮膚細胞もダメージを受ける事になります。
最も多様で強い反応性を持つ活性酸素はヒドロキシラジカルは一酸化窒素のことで、有毒性も強くなってきます。

活性酸素はマイナスの不対電子を持っていて不安定であるため、自らが安定しようとして、プラスの電子を持ったものと反応しようとします。その際に、相手の電子を奪ってしまうので、奪われたほうの分子が不安定になりダメージを受けたり、死んでしまうということになります。
それ以外の有害な活性酸素の働きとしては、脂質、特に飽和脂質(動物性タンパク質)を酸化させて過酸化脂質を産生して、心筋梗塞、癌、アトピー性皮膚炎、眼科疾患、中風を発病させたり、悪化させたりすることが考えられます。

活性酸素がどのような過程を経て作られるのかには、諸説あるようですが、普通に呼吸しているだけでも吸入した酸素の2%がエネルギー発生の時に活性化して活性酸素に変質するとされています。
活性酸素の発生源は、そういった呼吸による自然な生理現象以外にも数多くある。
排気ガスや工場の排煙などによる大気汚染、オゾンホールが開いた事による紫外線の増大、加工食品に含まれる各種食品添加物、煙草、放射線使用のレントゲンなど医学的検査、化学物質由来の医薬品、携帯電話、レンジ、パソコンなどの電磁波、心理的ストレスや激しい怒り・悲しみなど感情の高ぶり、農薬、水道水のトリハロメタンなどがあります。

つまり、工業化の過程を経た産業文明国で生きている私達は、活性酸素が常時体内で発生している状況にあるわけです。
それらの有害な生活環境の全てを変化させたり、自然豊かな土地に引っ越ししたりするのが最もいいのでしょうが、多くの人は職業上・生活上の理由からそれは不可能です。
それぞれが、活性酸素を減らす健康的な生活態度を身に付けて、ビタミン・ミネラルに配慮した食事を取るようにして、適度な運動をしていくくらいしか予防法はないかもしれません。

高額な活性酸素除去治療を保険適応外で行っている美容整形の医師もいるようですが、それがどの程度実際に効果があるのかは科学的に検証されていないですね。
そういった高額医療・健康食品などの場合には、プラセボ効果(これだけ高ければ効果があるはずだという自己暗示的な偽薬効果)の果たす役割も無視できないですが、経済的余裕があって美容と健康に特別、力を入れている方であれば試してみる価値はあるかもしれません。
プロスポーツ選手などでは、SOD(スーパー・オキサイド・ディスムターゼ)という抗酸化作用のある酵素を体内に取り入れる療法を実行している人は多いみたいですけれども。
ちなみに、SOD以外にもカタラーゼやグルタチオンペルオキシターゼといった抗酸化作用のある酵素がありますが、それらは人間の体内で作り出す事のできる酵素です。
ただ、加齢すると共に体内で製造される抗酸化物質の量は次第に減っていくので、それが老化現象の進行と関係があるともされています。