日本経済と金融政策。セーフティネットの必要性。


アメリカの連邦公開市場委員会(FOMC)が、民間設備投資や民間住宅の増加を軸にした景気の持続的拡大局面において、短期市場金利を年利1.25%から0.25%引き上げて、金融政策を正常化させる方向に動いたが、日本は以前、低金利量的緩和政策を維持している。
米国のITバブルと呼ばれる非常に短期な景気の上昇局面があったが、バブル崩壊後数年で米国は金融政策における正常化を軌道に乗せて周期的に来るであろう不景気の波に備える構えなのであろう。

中東の政治情勢の混迷と中国の原油消費の飛躍的増大によって、原油価格が高騰している事にアメリカ、日本を始めとした先進国は長期的観点で物価上昇を懸念している。
原油価格の上昇は、暖房用の灯油の消費が増える冬には市民生活の負担を直接的に重くするし、毎日の移動に必要な車のガソリン代にも大きな影響を与えるが、こればかりは如何ともし難い。

日本では、一時期、世界的なデフレの雰囲気に呑まれて、物価が下落してデフレスパイラルが心配されたが、現在では物価も安定してきているようだ。
台風など自然災害の影響で、生鮮の野菜や果物の一部では激しい値上がりが見られ、これは市民生活を直撃するものだ。今年の日本は、10個の台風上陸に加え、つい先日の新潟県中越地震と兎に角異常気象と天災に泣かされ続けている。

財政支出を減らして財政再建へ取り組むことは、自然災害によって先延ばしになるが、国民は緊急時における生活の安全と保護の為に国家に税金を払っているので、新潟県への生活支援と復旧作業は十分に行ってほしい。
無思慮な高級官僚によって、様々な無為なる公共事業が行われ、私的流用とも思われる水増し請求で食いつぶされた税金は惜しいが、本当に支援や復興を必要とする困った同胞・日本国民を救う為に使う税金は全く惜しいものではないし、こういう時にこそ進んで補正予算を組み十分な財政出動を促すべきである。
北陸の冬空にあって毛布が足りずに寒さに凍えている国民がいること、更に十分な食料や飲料がなく温かい食べ物が全く口に入らないといった事態があることは、仮にも経済大国と呼ばれる国家にあって誠に情けない事態であり慙愧すべきことであると思う。

災害支援の話へと逸れたが、バブル崩壊後の失われた10年と呼ばれる景気停滞期を経てようやく日本経済にも回復の兆しが数字として現れてきている。
実質成長率だけを見ると、先進国の中でも高い水準に達しつつあり、そろそろ日銀本来の金利操作による金融政策の役割を取り戻すことを考えてもいいのではないだろうか。
国内の企業物価指数も上昇線を描いていて、デフレの陥穽からも脱け出しつつあるようだ。
アメリカ、ヨーロッパを中心に国際的に金融政策を正常化する傾向にあり、日本がいつ量的緩和政策を解除して有効な金融政策を取れるようになるのか注目したい。

毎日新聞 ―社説―
http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/archive/news/2004/08/20040812ddm005010136000c.html

また、日本の景気回復が、大企業での経営合理化やリストラ、そして、中小零細企業の市場の競争原理による淘汰といった弱者の切捨てを通して為されたという批判もあるが、私ももっと弱者や敗者が立ち直れるような支援をする手厚い十分なセーフティネットを張ることはとても重要だと考えている。
一度失敗したら、二度と再起することが出来ないとする完全な弱肉強食の経済は、人心を殺伐として刹那的な自殺や破滅的で短絡的な犯罪を増やして世情を混乱され治安を悪化させるだけであり、誰もが経済的弱者となる可能性がある以上、失敗しても再起が可能となるセーフティネットを張ることは必要だろう。

金融や行政などの専門の知識を持った人をターン・アラウンダーというようだが、国営のターン・アラウンダーとして産業再生機構というものがある。
産業再生機構は、実質的に経営の権限を国家が握ってしまって、債務処理に全力であたるという趣が強いので、何だか国家のハイエナ的な整理屋・掃除屋というあまりよろしくない印象をもたれてしまっているようだが、それでもダイエーのような大企業を債務超過で破産させてむざむざかつてのそごうのように解体してしまうよりは何とか再起できるようにするという発想は意義深いものだとは思う。自主再建が完全に無理であれば、国に経営権を取られることも致し方ないという面もあろう。そもそも、放漫経営で、債務ばかりを異常に肥大させる経営手法に問題があるのだから。

民間でも企業再生に携わる専門知識を持ったターン・アラウンダーをもっと育成していく必要があるだろうし、社会全体で敗者復活が可能な制度やシステムを作り上げていく努力をしていって欲しい。
失敗や敗北を恐れないチャレンジ精神があってこそ、新たな日本経済の牽引役となる企業の芽が生まれるのではないだろうか。