アメリカ大統領選挙・ブッシュ再選決まる

米大統領選:ブッシュ氏が再選決める ケリー氏が敗北宣言  ―毎日新聞

http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20041104k0000m030128000c.html


【ワシントン佐藤千矢子】米大統領選は2日、投開票が行われ、AP通信などによると、3日未明(日本時間同夜)までに、共和党ブッシュ大統領(58)がフロリダなど28州で選挙人計254人を獲得、ペンシルベニアなど19州と首都ワシントンで同252人を押さえた民主党のケリー上院議員(60)より優位に立った。一般投票の開票が終了したオハイオ州(20人)でもブッシュ氏の勝利がほぼ確実となり、AP通信によると、ケリー氏は同日午前11時(同4日午前1時)過ぎ、ブッシュ氏に電話で敗北を認めた。ブッシュ氏は同日中に勝利宣言する意向で、ブッシュ氏の再選が確定した。ケリー陣営はいったんは同州の「暫定票」の集計を要求して敗北を認めず、一時は混乱したが、最終的に逆転は困難と判断した。暫定票をめぐって混乱すると懸念されたが、投開票日の翌朝には決着した。

アメリカ大統領選挙が選挙前の下馬評通り、共和党ブッシュの再選で決着しました。
id:cosmo_sophy:20041020に、共和党ブッシュと民主党ケリーの外交政策や国内の社会保障、対日政策路線の対比の概略を示しましたが、ブッシュが選出されケリーが落選した事は日本一国だけの問題として考えれば、経済通商的にも国家安全保障を含む外交戦略的にも好ましい事とは言えるかもしれません。

世界全体の平和秩序の回復やパレスチナ問題解決の進展、中東情勢の安定化にとっては好ましくない面もあるかもしれませんが、日本はアメリカの同盟国として友好的関係の中でアメリカのユニラテラリズム(一方的外交・単独行動主義)による独走の危機を抑止する形を取れれば世界秩序の観点から大きな貢献が出来るのでしょうが、小泉さんにそれだけの毅然とした覚悟や真の友好関係の自覚があるかどうかが課題となってきます。
世界全体の情勢を見据えた日米の戦略的パートナーシップの在り方を考える事は、直接的にTMD(戦略的ミサイル防衛)構想などを含む国家安全保障に関わる問題となり、憲法9条を中核とする憲法解釈や改憲議論へと行き着く可能性を生み出してきます。

最終的な理想としての平和主義をとりあえず形式的なものに過ぎないとしても私は維持すべきだと考えますが、果たしてどのような形に国会での憲法議論は落ち着きを見せるのでしょうか?
利害得失を巡る国際紛争や経済格差による対立、宗教・民族問題に関わる争いなど国際的な対立や衝突の問題解決を軍事力によってしか果たす事が出来ないとするリアリズムの呪縛と制約は確かに現実の政治状況を反映した粛然とした重みと確かさを持ちますが、そうであるとしても人間の潜在的な共生と寛容の可能性を私は信じたいという思いがあります。
普遍性や全体的調和を目指す人間理性によって過去の憎悪と復讐の感情を溶解して、それらを倫理的感受性や共感的理解という『対話の可能性』を生み出すものへと昇華出来ないものでしょうか。

今後のアメリカとの国家関係の中で問題となってくるのは、過激なイスラム原理主義非自由主義・非民主主義圏である第三世界の民族との『テロリズムの戦い』*1であり、それと関連した部分で『グローバリズムへの対応と日米通商の均衡問題』でしょう。
更に、日本国においては、漸次的な国力と人口の衰退が少子高齢化社会の影響で迫ってきていますから、そういった厳しい政治状況と経済情勢の中でどのような形でアメリカと関係し、国際社会に貢献していくのかが大きな課題となってきます。

私は、歴史を学ぶ事に人類の足跡を追体験する喜びを感じ、アレキサンダースキピオ始皇帝、ナポレオンといった歴史的英雄の栄光へと向かう覇権を巡る戦争や緻密に考え抜かれた戦略に感嘆する事もありますが、そういった感嘆や興奮の中に『敗者を切り捨てる人間の残酷さや戦闘を好む原罪的な欲求』があるのかもしれません。
歴史が好きな人の歴史の楽しみ方にも色々とあるのでしょうが、クラウゼヴィッツの『戦争論』を紐解くまでもなく人類の歴史とは取りも直さず戦争と対立の歴史であり、勝者の栄光と敗者の消滅の歴史でもあります。
人々によって高く評価され憧れとされるような英雄・君主・軍師・豪傑の戦争の歴史を読む時には、そういった人間の無意識的な戦闘欲求の充足の面が少なからずある事を直視して、実際に同時代人の生命が無残に散る現実の戦争と過去のテキストに記録された輝かしい観念の戦争との区別を厳然とつける必要を感じます。

時間があれば、アレクシス・ド・トクヴィルでも読みながら、いつかアメリカの民主主義の伝統と建国の精神や共和党民主党イデオロギーや政治理念の違い、リベラリズム保守主義の違いなどについても論じてみたいです。

*1:アメリカがテロリズムとの戦いと呼ぶものは、これから更に速度を上げて急速に進む市場経済化の流れの中では、広義には貧困階層・政治的社会的弱者との戦い、あるいは、自由と民主主義の拡大普及化といったアメリカ的価値観の押し付けの中で生じてくる反抗分子やナショナリズムとの戦いといってもいいでしょう。オサマ・ビン・ラディンアルカイダの様な明確な悪としてのテロリズムとの戦いと前述のような弱者故の反抗との線引きは実はかなり微妙で難しい面も生まれてくるのではないかと思います。