ファルージャ総攻撃とアメリカの大統領選挙に垣間見る人種差別


ブッシュ大統領が大統領選挙で再選された事で、対イラクの統治政策と復興支援は現在までの路線を継続することとなり、テロリスト集団への積極的な攻撃方針も踏襲され『テロとの戦争』は新たな拡大局面を迎える事となった。
共和党ブッシュが標榜するのは、『テロに屈さない強大な誇りあるアメリカ』の確立とその為の国際覇権戦略の展開である。日本の小泉首相は『ブッシュ大統領とは親しい友人』といつも声高に語っている事もあり、イラクにおける香田証生さん殺害事件においても『卑劣なテロには絶対に屈しない日本』をアメリカや世界にアピールして見せた。

香田さん事件の報道の際に、私はブログで何か私見を述べようとも思ったが、時事問題にスピーディに対応できなかった事と、香田さんにも自己責任の非があった為に意見を控えた。
しかし、軽い好奇心や個人的な良心でイラクに入国する民間人でなくとも、おそらく日本人の誰が人質になろうとも、小泉さんの自衛隊駐留の判断を覆す事は出来ない事を考えると、自衛隊の皆さんや公職で派遣されている方々の身の安全は懸念される事である。

自衛隊は軍隊でないといい、海外への自衛隊派遣は憲法9条に抵触しないというう解釈の拡大やサマワ非戦闘地域で安全が確保されているという強引な詭弁めいた言い回しがなければ、自衛隊の方々が生命を賭けて国際貢献国益につながる外交戦略の為に働いているのだと容易に納得できるのだが、現状の憲法解釈と自衛隊の位置付けは余りにも曖昧でご都合主義のいい加減さばかりが目に付く。
自衛の為の戦闘と国際貢献(人道的援助・復興援助)の為の海外派遣は認可する旨の付加条項を憲法9条に加えて、平和主義の理念は堅持するという構えを取ることも可能だと思うが、国際貢献アメリカの世界戦略の意向に従うものばかりではやや公正さや正当さを欠く国際貢献になる危険は確かにある。

昨日のニュースで、米軍が反米武装勢力、つまり、アメリカが定義するテロリストに対する総攻撃をファルージャにおいて開始するという報道がなされていた。
親米政権であるイラク暫定政府のアラウィ首相も、米軍によるテロリスト掃討作戦を支持して、ファルージャやラマディに非常事態宣言を出し夜間外出を禁止して米軍の総攻撃を承認しているようだが、イラク戦争開始以来、最大の激しい市街戦が繰り広げられる恐れがでてきた。

ブッシュ・アメリカにとって、ザルカウィらテロリスト集団や反米武装勢力は正に『世界とアメリカの平和と安定を乱す危険なテロリスト』ですが、イラク反米武装勢力テロリズムに訴えるイスラム原理主義者にとってはアメリカが『イラクの国土とイスラム教の聖地を蹂躙する侵略者』なのですから、講和や和平の道はなかなか模索できないですね。
既に、和平できる勢力は妥協して親米的な政権に従って生きる事を選択しているでしょうから、今なおファルージャに立てこもってアメリカ軍と一戦交えようとする人たちは、アメリカや諸外国の軍隊が無条件撤退するという方法以外では対話の通用しない相手だと推測できます。

確かに、アルカイダザルカウィ氏の率いるテロリスト集団の様に、徹底的に対話を拒絶して、軍隊や政府と何の関係もない民間人を残酷な方法で虐殺するような弁護の仕様のない危険極まりないテロリストを野放しにすることは出来ないのですが、彼らとてアメリカが中東やムスリムの地から完全撤退すればわざわざ海を越えて米国本土を叩こうとは思わないでしょうし、テロ活動を中止するという建設的な取り決めが出来ないわけではないでしょう。
しかし、現実的な外交戦略から考えて、アメリカが『不安定な弧』と呼ぶ、『北アフリカ〜中東〜インド・パキスタン台湾海峡北朝鮮含む極東』の領域から軍隊を撤収することは絶対に考えられないので、これからも規模の大小はあれ、アメリカとナショナリズム・宗教的原理主義反グローバリズムの紛争や戦闘は引き続き勃発すると考えられます。

民族や宗教や同胞の為に生命を失うことを何ら恐れていない人々は、自らの信奉する価値観や存続させたいと思う宗教的・文化的な共同体の為にテロリストに変貌する可能性は絶えずありますし、支配的あるいは拡大的な価値観・理念を掲げる超大国に抵抗する勢力はテロリストの烙印を押される覚悟が必要となってくるのかもしれません。現代の日本人は、通常、こういった逆らい難い流れを『時代の流れ』だとか『時代の空気』だとか呼んで、その流れに逆らわず上手く適応しながら流されてしまう傾向がありますし、先進文明国の必然としての『生命至上主義』の価値観を持っている人が多いので、テロリストの論理を聞いても、何故、そこまで必死になって守りたい価値があるのかがわからない場合も多いでしょうね。
『その為になら死んでもよい理念や観念』というのは、現代の日本では余り目にかかることはないですし、私も実際の生活世界において生命と引き換えにする程の強固な固定的理念は持ち合わせていません。


話は変わって、つい先日行われた大統領選挙で民主党に不利な票操作や不正な人種差別的思想に基づくような票の切捨てが行われたという話があるそうです。
ジョン・ケリーは、そういった投票操作によって、ニューメキシコオハイオ、フロリダ、コロラドなどの州で相当多くの票を失ったといわれます。

コロラド州では、本来、投票権を認められているはずの刑務所出所者や前科者の投票権が不当に剥奪されたのですが、幾つかの投票行動調査では、有罪判決を受けた者の90%が民主党に投票するというデータがあるようです。

オハイオ州では、有権者登録を希望する黒人が多く登録を拒否されるという有権者名簿における人種差別のような事態が見られ、民主党の有力な支持基盤とされるアフリカ系アメリカ人(黒人)の票がカウントされないと言う事が多い。

投票機械の故障や不都合によって無効票とされる欠陥票も、白人では少なく、黒人やヒスパニックといったマイノリティで多いという調査結果が、ハミルトン大学のフィリップ・リンクナー教授によって出されている。ヒスパニック系の欠陥票は、白人の欠陥票の約5倍であり、ネイティブインディアンの欠陥票はヒスパニックよりも多いという。
アメリカのヒスパニック系をはじめとするマイノリティ(少数民族)の大半は、民主党支持層を為していることを考えるとこれが事実なら明らかに共和党を有利にする為の意図的な不正な投票操作と考えられる。

全国で、約200万票に上るカウントされない無効票・欠陥票・未確認票のうちの約54%が、アフリカ系アメリカ人(黒人)の票である。
アメリカの民主主義の不完全さや不公正さは良く聞く話ではあるが、マイノリティ抑圧や人種差別的な思想の実践が暗黙裡に選挙からの締め出しの形で行われるならば、それは最早民主主義国家における選挙とは呼べないであろう。


大統領選に関する参考URL―海外―
http://www.tompaine.com/articles/an_election_spoiled_rotten.php