グローバリズム考察と東洋思想の歴史の見直し


私は、読書のスピードは結構速いほうだとは思うのですが、空き時間を見繕ってのジェフリー・ディーヴァー『石の猿』の読了には少し時間がかかりました。
小説は、ジャンルを問わず純文学や歴史小説から恋愛小説、ミステリーまで何でも好きなのですが、読み始めると次々に読みたい作品が出てくるので、ここ数年は小説を読む機会がめっきり減りましたが、また機会があれば色々な小説をちょこちょこと紹介していけたら良いなと思います。

『石の猿』は全編で490ページ、ミステリー小説としてはなかなかの長編小説ですが、スピーディーな物語の展開の中で、ライムをリーダーとする警察捜査陣と蛇頭のゴースト、中国人家族の間で息つく暇もない追跡劇と闘争が繰り広げられます。

政治経済のグローバル化による格差問題や中国共産主義の暗部の歴史が、濃密な登場人物の情念のやり取りやトラウマとして残る記憶の回想を通して語られていき、物語とは別の部分でもいろいろと考えさせられるものがあります。

孔子老子といった古代中国の思想家の格言がふんだんに引用される事もあり、久々に儒教道教の歴史や思想を振り返ってみたい気持ちにさせられました。

論語』『孟子』『大学』『中庸』の四書、『詩経』『書経』『礼記』『易経』『春秋』の五経は、現代では、東洋の国々においても最早全く省みられることがなくなってきましたが、君子や士大夫としての道を説いた儒教哲学から学び取る事の出来る人生の教訓も少なからずあるように思えます。

全体的な身体の調和や均衡を治療の根幹におく東洋医学についても、その内詳述したいですし、あらゆるモノ(人・カネ・モノ・情報)が国教を越えて結びつくグローバリズム経済の実態や今後の世界情勢、国民国家という基本的な枠組みの未来などについても考えたいです。

『土地・民族・文化・宗教・風俗といった伝統的な価値の枠組み』を『最新科学技術・情報化社会・バーチャルな国際金融取引きといったグローバルな価値の枠組み』が侵食しようとする時、世界でどのような変化や衝突や進歩や停滞が起こるのか。
私達は、今、時代の大きな変革期に歴史の証人として立ち会う栄光を得ていると同時に、不安定で流動化する歴史の奔流と向き合う試練にも晒されているのかもしれません。