アメリカの最高裁のバーチャル児童ポルノに関する判断

http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/culture/story/20020417205.html


レンキスト主席裁判官はこう記す。「わが国の児童ポルノ関連法を確実に施行するという目標は切実なものである。(児童ポルノ防止法は、)児童ポルノの定義を広げ、現実の子どもがあからさまな性的行為を行なっているのとほとんど区別できないようなコンピューター映像を法の適用範囲に置くことによって、この目標を追求するものである」

 児童ポルノ防止法は、当時生まれつつあったコンピューター技術に対する連邦議会の回答だった。この種の技術により、現実に存在する子どもの無害な画像に手を加えたり、子どもによる性的行為を装うシミュレーション映像をゼロから作成したりできる。

 この法律は、通常の児童ポルノに対するそれまでの禁止範囲を拡大したものだった。バーチャル画像の作成では現実の子どもに危害が及ぶことはないものの、小児愛者や児童性的虐待者の欲情をあおる材料となり、その結果現実の子どもたちに危害が及ぶおそれがあるとの理由で、連邦議会は禁止範囲の拡大を正当であるとした。

 言論の自由連合も児童ポルノには反対しているが、この法律によって、会員が制作した――たとえ社会的に好ましくないものであっても――合法的な映画や写真が、違法とされる可能性があるとしている。

 また同団体は、コンピューターで加工した性的画像のうち、現実の子どもが特定できるものについて禁止する条項については異議を唱えなかった。

 言論の自由連合が訴訟を起こしたのち、連邦地裁は法律を支持したが、サンフランシスコの連邦第9控訴裁判所は1999年12月、訴えられている条項は合衆国憲法の言論の保護の原則に違反しているとの判決を下した。

 このとき控訴裁判所は、コンピューターで作成した児童ポルノと、現実の子どもを使うこととの間の関係を政府が示していないと指摘した。

 今回最高裁は控訴裁の判決を支持し、児童ポルノ防止法は、裁判所が以前に定義した「猥褻」に該当しない画像まで禁止することになるとの事実認定を下した。もちろん実際の子どもを使った猥褻表現や児童ポルノは、憲法言論の自由の保障による保護の対象とはならない。

 裁判の過程でクリントン政権ブッシュ政権児童ポルノ防止法を支持し、この法律は「現実の子どもが関わる児童ポルノ市場を撲滅するのに役立つ」と主張してきた。

 この訴訟とは別に、もう1つ、最高裁が子どもとポルノについて審理している訴訟がある。こちらの判決はまだ下されていないが、インターネット上のあからさまな性的題材への子どものアクセスを制限する法律が憲法に違反していないかどうかが問われている。


アメリカの最高裁では、現段階では、リアルな現実の子どもを使用した児童ポルノとコンピューターで作成したバーチャルな児童ポルノの区別を認めて、後者は現実の子どもをモデルにしたりしていない限りにおいて言論の自由の保護の範囲内に含まれると判断しているようですね。
架空の登場人物と現実世界の児童とを混同してしまうことは、正常な精神機能が働いている限りにおいてまず考えられない事だとは思いますが、現実世界の児童を性的な快楽の対象として取り扱いという欲望の代理的充足としてバーチャルな児童ポルノを消費している場合は、その欲望を持続させる役割を果たすという事は完全には否定できないでしょう。

私も、漫画、アニメといったバーチャルな創作としてのポルノ商品群に権力による規制をかけるべきではないと思いますが、問題は受け取り手である個人の精神機能が正常に働いているか、認知過程を制御する能力を取得しているか、社会的な現実感覚を学習しており、非社会的な問題行動と性的嗜好の逸脱が相乗効果をおこしていないかといった諸点がポイントになってくるように思えます。
ペドフィリア(幼児性愛・児童性愛)の問題についても、また精神医学や心理学の知見も交えながら掘り下げることもあるかと思います。