哲学

現象学的還元を巡る考察:モノが『ある』とはどういうことか?

先日、フッサールの志向性にまつわる『ノエマ・ノエシス』の認識論を簡単に眺めてみたので、彼の著作の一覧を挙げておこうと思います。 フッサール(Edmund Husserl 1859〜1938)の著作 『算術の哲学』(1891)『論理学研究』全二巻(1900〜1901):最初の現…

志向・指示するものと志向・指示されるもの

インマヌエル・カントが主観としての認識によって把握される『現象』と主観的意識から独立した客観としての『物自体』とを区別したように、哲学的思考の中ではしばしば意識(作用)と対象、更に対象の意味(内容)を区別して考える。この二項対立的な図式の…

孔子の考えた君子像

孔子の言行録である『論語』は、孔子の弟子たちによって編集編纂された“仁”を頂点とする徳性に関する道徳書であり、周を聖人君子が治める封建主義的な理想国家とする実践的な政治哲学の書でもある。 大人(有徳者)と小人(無徳者)の区別を様々な実例や場面…

ヒュームの因果関係の認識を巡って。実在論と観念論

人間の知性は外部世界をどのように認識しているのか、あるいはどこまで正確に現象や事物を把握することが出来るのかという問題は、認識論や存在論の主要な命題として長い哲学の歴史を通して考え続けられてきました。 この哲学的命題の主題を簡潔にまとめれば…

進化生物学の周辺領域と生命倫理

進化生物学の知見や観点から人間の行動メカニズムや心理過程を研究する学問分野を、進化心理学と言います。進化心理学は非常に広範な領域を包摂する学問ですから、それと関連する分野には動物行動学だとか人間行動生態学だとかいうものもあります。進化心理…

エピステーメーとドクサ

古代ギリシアのアテナイに建てられたプラトンの学校『アカデメイア』は、近代の大学教育機関、高等教育機関の起源と言われている。アカデメイアは、約900年間も残存して、西洋的学知の基盤を形成すると共に初期には多くの英才を世界に輩出した。アカデメ…

矛盾を巡るウィトゲンシュタインの怜悧で敬虔な数学観

ウィトゲンシュタインの基本的な数学観は、『数学を無誤謬で無矛盾のゲーム』と考えるものである。 簡単にウィトゲンシュタインの数学観をまとめると、以下のようになるだろう。1.数学とは普遍的規則に従った数式の変形(計算・証明)であり、それ以外の数…

ウィトゲンシュタインと科学哲学

ウィトゲンシュタインは、命題の意味とは、『命題を検証する方法』であると考えていた。 そして、ウィトゲンシュタインの『反哲学の徒』としての側面がそこにある。彼にとって検証方法を持たない形而上学的命題は無意味なのであり、考えても解決できないどう…

分析哲学と科学哲学の関係

ウィトゲンシュタインは、世界を統一理論によって記述する野望を抱いた論理実証主義を標榜するウィーン学団に『論理哲学論考』を通して哲学的バックボーンを与えたとされる。 ウィーン学団は、哲学よりも科学を高く評価して、哲学から形而上学を排斥して科学…

言語と論理と世界について考える

論理学の入門書をいつか暇を見つけてもう一度じっくりと読み直してみたいとウィトゲンシュタインの言説の周辺を巡りながらふと考えた。 『論理的に物事を考えなさい』とか『物事は論理だけでは決まらない』とか日常的に様々な事が言われていますが、実際には…

命題論理学と世界の写像としての言語

論理学とは、正しい推論の在り方を対象とする学問であり、現代論理学は、形式的な体系が示す様々な性質や真偽判断に関するものと考えられる。 論理学の中には、いろいろあるが、僕はそんなに論理学に明るくないので、代表的な命題論理学をかじった程度しか知…

ウィトゲンシュタインと哲学的問題

ウィトゲンシュタインに至る言語哲学あるいは論理学、分析哲学の流れは、フレーゲに始まり、ラッセルに継承されたと言われる。 哲学の世界は、単なる偶然と覚えやすさの為なのか、何らかの必然的な弁証法的連関の為なのか、『3人の哲学者の組』がよく現れる…

カントの定言命法と一般的な道徳観

道徳とは、人間の行為の善悪を区別して判断するものであるが、道徳規範が人間の行為の全ての領域に及んでいると考える立場とそうでない立場がある。 道徳的であるという事は、どういう事なのだろうか。インマヌエル・カントは、理性の普遍的な命令である『定…

ミルの『自由論』:1

J.S.ミルの自由論を読んでいるので、とりあえず『自由論:1』と題して、時折、暇のある時にいろんな感想をアップしていこうかと思います。 ミルの『自由論』序章には、権力と自由との闘争が示されています。 自由とは、政治的権力者からの圧政や暴政に対す…

国家権力による抑圧への懸念

宮台真司氏のBlog http://www.miyadai.com/「相互監視社会」の到来が生み出す恐怖〜公権力と市民、アウトローの関係性』は実に興味深く読ませて貰った。 国民の集合あるいは共同体としての『社会』と法律によって正当化された暴力装置であり権力である『国家…