哲学

反日デモに内在する中国共産党の危機:共産主義は何故、挫折せざるを得ないか。

中国や韓国で連日繰り広げられた反日デモの原因には、中国の共産党独裁体制に対する人民の不満や反発の鬱積、日本の国連安全保障理事国加入への反対、中国側の内政的観点による人民のガス抜きなど幾つかの要因を考える事が出来る。 中国政府の見解では、日本…

本居宣長を突き動かした“もの学びの力”と日本の国学の独自性

本居宣長(上) (新潮文庫)作者: 小林秀雄出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1992/05/29メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 32回この商品を含むブログ (53件) を見る 江戸時代の国学者・本居宣長(1730-1801)は、伊勢(三重県)飯高郡松阪(松阪市)の商家・小…

所得獲得の経路と経済階層の固定化の相関関係と正義・公正の原理

id:cosmo_sophy:20050302において示したのは、現代社会の経済活動において所得を獲得する方法には、大きく分類して以下の3種類があるという事、そして、雇用形態・職業選択・経済格差に関する世間一般の不平不満が“利益獲得の経路の選択と経済階層の固定化”…

所得獲得の経済活動を巡る倫理的パラドックス:スキーマを介在した価値命題の視線を通して

世界の本質に目を向ける時、私たちは自然世界に対して壮大や優美を感じその摂理に驚嘆するが、一度、本質探究のまなざしをゲゼルシャフト(功利主義的な利益社会)としての人間社会へと向けると、閉塞感や不平等感を感じその秩序に何らかの不満や問題を感じ…

快楽と利益を求める功利主義の強靭な影響力

哲学史上には、倫理の指標を取り扱う数多くの思想的立場がありますが、現代社会で優勢というよりは最早支配的と言える『自由主義(liberalism)』『功利主義(utilitarianism)』の基礎を論述したのはJ・S・ミル(John Stuart Mill 1806〜1873 英)です。 ミル…

神の恩寵から離れた優美さ・生と隣接する死と愛

神の属性が、一切の過失と欺瞞のない完全無欠さであるとすれば、神の恩寵(grace)は、人間よりも動物に多く与えられている。 人間の行動やコミュニケーションは目的志向や自己意識によって規定され、目的達成や自己意識の満足に向かう過程には幾多の過失や欺…

「いんちき」心理学研究所を巡る沈黙のオーディエンスの意識化と孤独感について

「いんちき」心理学研究所|終了 「いんちき」心理学研究所|終了:その後 憂鬱なプログラマによるオブジェクト指向日記:沈黙のオーディエンス 浅野教授という方が開設されていた「いんちき」心理学研究所が、閉鎖の運びとなったようです。 「いんちき」心…

メタレベルの言語的コミュニケーションの特異性と可能性

人間の言語的コミュニケーションの特異性というものが何処にあるのかと考える時には、対照的な一般化された抽象レベルの存在が思い浮かぶ。 それは、現実世界に存在する個別のバラバラな事物に、“概念”によって秩序を与え、共通理解を可能にする事でもある。…

知識(knowledge)と知恵(wisdom)の相補性とユングのコンステレーション(constellation)

知識(knowledge)と知恵(wisdom)は異なるが、それらは相互補完的な関係にある。 膨大な知識も深遠な知恵もそれ単独では、世界を十全に把握し、人生の価値を思う存分満喫する事は出来ない。 私は、精神性と身体性のアナロジーとして、よく知識と知恵の対比対照…

切り離す事の出来ない『脳・身体・環境・他者』の連動が創出する幸福をアフォードする。

今日は、id:KENTAROさんの所で、『人間の脳と幸福を生み出す装置』に関する興味深い議論が行われていたので、そこにコメントした内容を一部加筆して掲載します。 id:Lainさんの意見なども色々と示唆されるものがありますので、関心のある方は、読んでみられ…

変転する人類の認識と克服されるアンシャンレジームとしての価値:寛容性を忘却しない普遍妥当性を目指して

『認識論・存在論・価値論』は、哲学の三大領域として密接に結びついています。私たちが、20世紀の『大量破壊兵器を用いた戦争の世紀』で学習した大きな倫理学的成果は、自然世界の真実への接近とその応用である科学技術の進歩が、人間の幸福や正義の実現…

語学に精通したラッセルと哲学に見る思考の解放性

偉大なる数理論理学者バートランド・ラッセル(Bertrand Russell, 1872〜1970)は、“ラッセル卿”と呼ばれるようにイギリスの名門貴族の傍流の家系*1に産まれた貴族であった。 ラッセルは、かなり小さな頃から語学領域に天才的な才能を見せ始めていた。祖父母は…

シャーマンの特殊能力と認知障害、ソクラテスのダイモンの声

進化論的な知見や立場から人間の行動や感情の由来を研究する『進化心理学』や病気や障害、寿命による死などを進化論の知識を利用して研究する『進化医学』などでは、統合失調症やうつ病などの精神疾患にも進化的な意義や環境適応的な要素があると説明される…

アリストテレスの三段論法から記号論理学(数理論理学)へ

人間の理性で最も有用性のあるとされる機能『論理(logic)』とは何か? 私たちはよく日常的な会話の中で、『彼の話は論理的だ』『彼の意見は非論理的だ』というセンテンスを口にする。 その場合に、私たちが留意しなければならない事柄は、『論理』に高い価値…

脳の機能局在説と『人間本性(ピュシス)』に宿る美徳

精神医学において、『二大内因性精神病』と定義されるのは、『統合失調症(精神分裂病)』と『双極性障害(躁うつ病)』*1ですが、何故、その他の精神障害である神経症・心身症・自律神経失調症などと区別されるのかという問いに本質的な答えを与える為には…

人間は無益な受難であり、自由の刑に処せられた罪人に過ぎないのか?

id:KENTAROさんからトラックバックを頂き、緩慢な睡魔と共に生きる意味について思いを馳せながら、簡単に内容を敷衍してみます。『絶対的な意味はない』というKENTAROさんの言葉が印象に残りましたが、サルトルなんかが言う様に『人間は無益な受難』に過ぎな…

アリストテレスの生気論から機械論的自然観へ

『自然の全ての事物には、何か驚嘆すべきものがある。』と、博物学的な自然観察の書『動物誌』でアリストテレスが述べた様に、私達人間は自然界特に人間の生命に対して物理的・化学的な考察では解明出来ない神秘的で深遠な何か、例えば、魂だとか霊性だとか…

実存的な存在意義の苦悩に対処する三つのスタンス

『生物の目的は何か?』という問い掛けに、生物学的な回答を示すと『個体の生存維持』と『個体の遺伝子の保存』『結果としての種の保存』と言う事が出来るが、人間を他の動物とは次元の異なる高次の生物だと考えたい人たちにとっては『生物学的な回答』だけ…

自己内面に広がるミクロコスモスの不可思議

私たちは、人間を考える時、心身二元論の檻に囚われやすい。 例えば、キリスト教の霊性、仏教の仏性、プラトンの永遠不滅の魂(プシュケ)、機械論的自然観を持ち延長と思惟の二元論で世界を把握したデカルトなど悠久の思想・哲学・宗教の歴史は、精神を持つ…

保守的な現実感覚と革新的な理想願望:現状肯定と否定の狭間で揺れる政治

id:cosmo_sophy:20041120で、ハーバーマスの政治思想を語る文脈で『右翼左翼の対立軸』について触れました。 現代社会の政治を語るに当たって、不必要な迄のイデオロギー的主張や宣伝は余り説得力を持ちませんが、『保守と革新・現状肯定と現状否定・現実的…

第20回京都賞開催に際して雑感・ハーバーマスの受賞

京セラの創設者・稲盛和夫が理事長を務める稲盛財団は、人類の文明・科学の進歩発展及び精神的な深化探求に貢献した学者・研究者に『京都賞』という国際的評価も高い学術賞を贈呈しているのだが、その歴代の受賞者の顔ぶれは壮観で優秀な研究者でありながら…

マグナ・グレキアを実現したギリシア人の歴史

民主主義思想と民主政治について、縷々と取り留めなく書き連ねてきましたが、民主主義の原点を遡れば、アリストテレス(B.C.384-B.C.322)*1のアテナイの政治体制に関する記述を読む事になるでしょう。*2古代ギリシア世界のアテナイのギリシア人*3による民主政…

民主主義思想と政治参加する市民(citizen)について

民主主義とは、政治的な意志決定方法に関する『政治思想』であると同時に、共同体とその共同体に属する個人である市民(citizen)の政治的なあり方を規定する『政治形態』である。 民主主義政体においては、『国民主権・主権在民』が前提であると学校の公民の…

生命の価値判断と脳機能中心の人間観

id:cosmo_sophy:20040923で、バイオエシックスの話題に少し触れましたが、バイオエシックス=生命倫理学は、生物学と倫理学を架橋する学問分野であり、『不可侵の生命の尊厳』や『人間の科学技術による生命の人為的操作の是非』について倫理的に考察を進める…

自由主義と現代社会

私達が戦後日本において享受した最大の権利といえば、あらゆる領域における『自由』です。『自由である事は正しく、自由でない事は間違っている』とは、文明的な産業の発達した経済社会や自由な雰囲気の漂う民主主義社会ではおよそ全ての人に共通する価値観…

満足した豚と満足しない人間の差異について

ミルの質的功利主義を端的に示す言葉に、『満足した豚よりも、満足しない人間のほうが良い』『満足した馬鹿よりも、満足しないソクラテスのほうが良い』という言葉があります。 この言葉の意味する内容は、『知性・理性によって感得される快楽・利益』を『本…

ベンサムの近代的な功利主義とエピクロスの古代的な快楽主義

前回、ベンサムの量的功利主義とミルの質的功利主義を粗描してみましたが、もう少しベンサムの考えた功利性というものを詳細に見ていこうと思います。 ベンサムの功利性とは即ち近代的な快楽主義(hedonism)です。古代的な快楽主義の代表者にエピクロス(Epiko…

快楽と利益を求める功利主義の強靭な影響力

哲学史上には、倫理の指標を取り扱う数多くの思想的立場がありますが、現代社会で優勢というよりは最早支配的と言える『自由主義(liberalism)』『功利主義(utilitarianism)』の基礎を論述したのはJ・S・ミル(John Stuart Mill 1806〜1873 英)です。 ミル…

コンピューター倫理学と倫理を解剖する愉悦

倫理学には、生命倫理、医療倫理、企業倫理、性倫理など様々な分野を取り扱うものがあるが、ダートマス大学のジェームズ・ムーア教授のコンピューター・エシックス(computer ethics)に関する論文が嚆矢になったとされるコンピューター倫理学という新しい分野…

フランスの哲学者ジャック・デリダ死去

仏哲学者のジャック・デリダさん死去 -asahi.com-http://www.asahi.com/obituaries/update/1010/001.html フランスの著名哲学者ジャック・デリダさんが8日深夜から9日未明にかけて、膵臓(すいぞう)がんのためパリの病院で死去した。74歳だった。AFP…