2004-08-01から1ヶ月間の記事一覧

古代哲学における存在と非存在

ソクラテスやプラトンといった西欧古代の哲学者たちは、『存在・あるもの』を永遠普遍にあるもの、変化せずにいつまでも同じ姿形をした実在として認識していた。自然に対する科学的な学問の体系化を意図したアリストテレスなどは、『不動の動者』という概念…

リーヌス・トーヴァルズというLinuxを立ち上げた人物についての評伝を読んだ。 知的所有権の偏狭な枠組みや既得権益の縛りを取っ払い、人類の共有財産としてソースやプログラムコード、システムを取り扱ったところにLinuxの成功の秘密があるらしいが、コンピ…

中世都市とは。

永井荷風が好んだという中世都市とは単純に言ってしまえば外敵から自分達を守る為に『囲われた町』である。しかも、その囲われるモノは物理的な壁だけに限る必要はない。 例えば、日本の中世の商業都市・大坂の堺は石や土の壁に囲まれているのではなく、堀と…

東秀紀 『荷風とル・コルビュジエのパリ』新潮社

東秀紀 『荷風とル・コルビュジエのパリ』新潮社を読んで、かなり昔に読んだ記憶のある永井荷風を再読したくなってきた。 現代作家にはなかなか見られない特異な作風とテーマを持った耽美派の作家である。作品が個性的なだけではなく、その人格や生き様も一…

フランダースの犬

フランダースの犬 Copyright (C) 2003 Kojiro Araki (荒木 光二郎) http://homepage3.nifty.com/yodaka/dogoffra.htm今日は、童心に返ってというわけではないのだけれど、何となくウィーダの『フランダースの犬』が読みたくなって読み始めると一気に読了し…

地球の悠久なる歴史

私達の地球は、約45億6千万年前に誕生した。 地球の最も初めの時期を地質学の時代区分で、『冥王代(Hadean)』と呼んでいる。冥界・冥府の王プルートが住む場所をハディスといい、それが語源となっている。 冥王代を過ぎると、地球は太古代という地質年代…

エピステーメーとドクサ

古代ギリシアのアテナイに建てられたプラトンの学校『アカデメイア』は、近代の大学教育機関、高等教育機関の起源と言われている。アカデメイアは、約900年間も残存して、西洋的学知の基盤を形成すると共に初期には多くの英才を世界に輩出した。アカデメ…

孔子の言葉にちょっと触れて

昨日、中国美術に象徴的に見られる美意識に『世俗からの離脱による隠棲』を上げたが、今日、見ていた孔子の言葉についての記述に、『知者楽水・仁者楽山』というものがあった。 古代の聖人君子も、清らかな綺麗な水が流れる土地を求め、人里離れた静謐な深山…

日本美術の幽遠性

源 豊宗著『日本美術の流れ』思索社 ISBN:4783510288 を世界の美の特長に思いを馳せて読んだ。 この書物の中では、日本美術は『秋草の情緒性』に象徴されるもので、西洋美術は『ヴィーナスの官能性』、中国美術は『龍の精神性』によって象徴的に示される。ヨ…

以下の書籍を機会があれば読もう。全て新書館のハンドブックシリーズだけども、何か101と88という数字でまとめることへのこだわりが面白い。西洋美術史の知識なんて高校時代くらいからプッツリ途絶えている感じがあるし、世界史も詳細はかなり忘れてる…

天才軍師カルタゴのハンニバル

世界史上有数の激烈な白兵戦として知られる『カンネの会戦』は、天才的な軍略家ハンニバルと共和制ローマの執政官軍団との間で紀元前216年に行われた。久々に塩野七生の『ローマ人の物語』のⅡ巻を手に取ってみた。実を言えば、私は塩野七生に出会うまでは…

矛盾を巡るウィトゲンシュタインの怜悧で敬虔な数学観

ウィトゲンシュタインの基本的な数学観は、『数学を無誤謬で無矛盾のゲーム』と考えるものである。 簡単にウィトゲンシュタインの数学観をまとめると、以下のようになるだろう。1.数学とは普遍的規則に従った数式の変形(計算・証明)であり、それ以外の数…

ウィトゲンシュタインと科学哲学

ウィトゲンシュタインは、命題の意味とは、『命題を検証する方法』であると考えていた。 そして、ウィトゲンシュタインの『反哲学の徒』としての側面がそこにある。彼にとって検証方法を持たない形而上学的命題は無意味なのであり、考えても解決できないどう…

人種ジェノサイドと対比する階級ジェノサイド

この間、ナチスドイツの人道に対する罪について少し書いたが、ナチスがユダヤ人やロマ(ジプシー)など特定の集団を絶滅しようとしたジェノサイド(虐殺)についてもフランスの新刑法典では規定されている。『ある民族的・種族的(エスニック)・人種的また…

センス・オブ・ワンダー

レイチェル・カーソン『センス・オブ・ワンダー The Sence of Wonder』を久々にパラパラと読んだ。 忙しい毎日の中で時間に追われているような人に、生きていく事に輝く価値が感じられなくなった人に、世界や人間に愛情を抱く事が難しくなった人にこの本はお…

人道に対する犯罪

国家によって犯された犯罪に関する文献を見ていたら、第二次世界大戦時のナチスドイツの犯罪追及について書かれていた。 ヒトラー総統という独裁者に支配されたナチスドイツは、第二次大戦でヨーロッパ全土をほぼ掌握していたが、その侵略と統治は激烈で非人…

分析哲学と科学哲学の関係

ウィトゲンシュタインは、世界を統一理論によって記述する野望を抱いた論理実証主義を標榜するウィーン学団に『論理哲学論考』を通して哲学的バックボーンを与えたとされる。 ウィーン学団は、哲学よりも科学を高く評価して、哲学から形而上学を排斥して科学…

言語と論理と世界について考える

論理学の入門書をいつか暇を見つけてもう一度じっくりと読み直してみたいとウィトゲンシュタインの言説の周辺を巡りながらふと考えた。 『論理的に物事を考えなさい』とか『物事は論理だけでは決まらない』とか日常的に様々な事が言われていますが、実際には…