2004-01-01から1年間の記事一覧

ファルージャ総攻撃とアメリカの大統領選挙に垣間見る人種差別

ブッシュ大統領が大統領選挙で再選された事で、対イラクの統治政策と復興支援は現在までの路線を継続することとなり、テロリスト集団への積極的な攻撃方針も踏襲され『テロとの戦争』は新たな拡大局面を迎える事となった。 共和党ブッシュが標榜するのは、『…

ブロイラーの精神分裂病概念の発展とボーダーラインの出現

前回、クレペリンが早発性痴呆(Dementia praecox)の疾病単位を確立して、それまで曖昧模糊としていた症候群から躁鬱病と統合失調症という『二大内因性精神病』を析出した事を見てきました。 内因性は、先天的・後天的な身体的原因が想定されるが原因を特定…

クレペリンによる精神医学の体系化と早発性痴呆の疾病概念

精神分裂病*1の名称の歴史は、オイゲン・ブロイラー(Bleuler,E. 1857〜1937)が1911年に『Schizophrenie:精神分裂病』の精神疾患概念の提示をした事とその邦訳(日本語訳)に始まります。 “Schizo”は『分裂』を意味し、“phrenie”は『魂・精神・息吹』を意味…

アメリカと日本の関係。幕末史を振り返りながら。

現在、蜜月関係にあるアメリカ合衆国と日本国の初めての出会いは、『太平の 眠りを覚ます 上喜撰 たった4杯で 夜も眠れず』の有名な狂歌に表現されるように驚愕と恐怖を伴う屈辱的な出会いでした。 強力な軍事力の象徴である蒸気機関で動く軍艦黒船*1を従え…

民主主義政体における主権者意識の低下

民主主義国家における議会政治のシステムと、古代ギリシア的なポリス市民による直接民主制から代議員による間接民主制への移行とその功罪を考えていました。 そもそも、選挙によって国民の代表者である政治家や国家元首(大統領・指導者)を選出することの意…

アメリカ大統領選挙・ブッシュ再選決まる

米大統領選:ブッシュ氏が再選決める ケリー氏が敗北宣言 ―毎日新聞―http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20041104k0000m030128000c.html 【ワシントン佐藤千矢子】米大統領選は2日、投開票が行われ、AP通信などによると、3日未明(日本時間同夜)…

IMF(国際通貨基金)誕生とブレトンウッズ体制の崩壊

開発途上国への資金援助や新興市場国への政策助言などをして世界の経済状況を安定化させ調整しようとするIMF(International Monetary Fund:国際通貨基金)の経済介入政策の問題点については、id:cosmo_sophy:20041003に触れましたが、今回はIMF誕生…

精神病理学のデファクトスタンダードとしてのアメリカ発DSM―Ⅳ

id:cosmo_sophy:20041101の記述で、フロイトの精神分析理論における精神病(統合失調症)の位置付けを大まかに略述した。 伝統的な精神分析では、精神病と神経症の区別を『現実検討能力・現実吟味能力』の有無と『主訴である症状の苦悩や内容について健常者…

郵政三事業民営化の妥協的着地点

郵政事業とは、『郵便事業』『郵便貯金』『簡易保険』の三事業からなり、物流サービス業の郵便事業と窓口ネットワーク、公的な金融事業の郵便貯金、簡易保険の二つに大きく分けられる。物流サービス業としての郵政公社のネットワークは、全国津々浦々まで広…

『政治とカネ』の問題と派閥政治の衰退

昨今、話題に上る事の多い『政治とカネ』の問題とは、今まで日本政治において暗黙の了解としてあった『金権政治・利権政治・派閥政治・陳情政治』などの総体である。 それらは、田中角栄によって日本列島改造論が高々と提唱された社会インフラ基盤が未整備な…

フロイトの精神病解釈。唯物論と唯心論

現在、統合失調症と呼ばれる精神疾患*1の歴史を遡る事で、20世紀の精神医学の概観を知る事が出来る。シグムンド・フロイト(1856-1939)の精神分析学が主要な適応症としたのは無意識的願望の抑圧として発病する『神経症(ヒステリー)』であり、精神病として…

少数民族同化の日本の歴史と歴史教育の理想的な在り方

id:cosmo_sophy:20041030の記事に、Tさんからのコメントがあったので、それへの返事を書いたついでにそれに関連した『歴史教育の理想的な在り方』について小文を書きましたので、今日の日記に書き残しておきます。 興味を惹かれた方は、10月30日のコメ…

対談集『国家と戦争』を読んでの雑感

数年前に入手して積読していた座談集『国家と戦争』 飛鳥新社(ISBN:4870313715)を読んだ。漫画家・小林よしのり、評論家・西部邁、作家・福田和也、政治学者・佐伯啓思の対談集である。 どの方も相当に癖のある人物として知られていて、好きな人は好き、嫌い…

自由主義と現代社会

私達が戦後日本において享受した最大の権利といえば、あらゆる領域における『自由』です。『自由である事は正しく、自由でない事は間違っている』とは、文明的な産業の発達した経済社会や自由な雰囲気の漂う民主主義社会ではおよそ全ての人に共通する価値観…

新潟県中越地震:優太ちゃんの奇跡の救出

テレビでリアルタイムで長時間中継されていた皆川貴子さんと子ども達の救出作業を、時間を見つけて断続的ではあるが悲痛な思いで見ていた。 国道を完全に断絶させる大規模な山崩れによって、ミニバンの車体が垂直に土砂に突き刺さるかのような形で埋もれてい…

日本経済と金融政策。セーフティネットの必要性。

アメリカの連邦公開市場委員会(FOMC)が、民間設備投資や民間住宅の増加を軸にした景気の持続的拡大局面において、短期市場金利を年利1.25%から0.25%引き上げて、金融政策を正常化させる方向に動いたが、日本は以前、低金利の量的緩和政策を維持し…

『男と女の進化論』を読んでの雑感

正統派の自然科学者からはトンデモ系と言われる竹内久美子の『男と女の進化論 竹内久美子 新潮文庫』(ISBN:410123812X)を読んだ。 一応言っておくが、竹内久美子の本は、科学的知識を得る為の科学書でも進化生物学の入門書でもないし、科学的に正確な記述…

新潟中越地震

この間、月の引力が地震発生の引き金となるというニュースをブログに書いた二日後に、新潟で甚大な被害を引き起こした大地震が発生しました。 迅速な救助活動と避難生活に必要な食料等物資の配給活動が行われる様に祈っていますが、実際に被害に遭われた方の…

満足した豚と満足しない人間の差異について

ミルの質的功利主義を端的に示す言葉に、『満足した豚よりも、満足しない人間のほうが良い』『満足した馬鹿よりも、満足しないソクラテスのほうが良い』という言葉があります。 この言葉の意味する内容は、『知性・理性によって感得される快楽・利益』を『本…

月の引力が地震発生に関係している

毎日新聞 ―今日の話題― 地震:月引力が発生の最後の引き金 http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20041022k0000e040045000c.html その結果、地震を起こした断層面が両側から押されている「逆断層」型の地震は、月の引力と潮の干満による力の組み合わせ…

ベンサムの近代的な功利主義とエピクロスの古代的な快楽主義

前回、ベンサムの量的功利主義とミルの質的功利主義を粗描してみましたが、もう少しベンサムの考えた功利性というものを詳細に見ていこうと思います。 ベンサムの功利性とは即ち近代的な快楽主義(hedonism)です。古代的な快楽主義の代表者にエピクロス(Epiko…

快楽と利益を求める功利主義の強靭な影響力

哲学史上には、倫理の指標を取り扱う数多くの思想的立場がありますが、現代社会で優勢というよりは最早支配的と言える『自由主義(liberalism)』『功利主義(utilitarianism)』の基礎を論述したのはJ・S・ミル(John Stuart Mill 1806〜1873 英)です。 ミル…

ネット集団自殺の心理

皆野町、ネット集団自殺報道 ―毎日新聞― http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/10/14/20041014ddlk11040123000c.htmlインターネットの自殺サイトを媒介した自殺、自殺手段としての車内での練炭燃焼による一酸化中毒、閉塞した社会環境と絶望…

コンピューター倫理学と倫理を解剖する愉悦

倫理学には、生命倫理、医療倫理、企業倫理、性倫理など様々な分野を取り扱うものがあるが、ダートマス大学のジェームズ・ムーア教授のコンピューター・エシックス(computer ethics)に関する論文が嚆矢になったとされるコンピューター倫理学という新しい分野…

アメリカ大統領選に寄せて

前述したような社会保障政策を巡っての論争が、大統領選挙を11月に控えたアメリカでも活発に行われています。 共和党のブッシュは、新自由主義者らしく市場経済のメカニズムに全幅の信頼を寄せて、社会保障給付は最低限のラインに抑えたい考えを持ち、民主…

社会保障費増大の問題と保守・リベラルの対立

毎日新聞 ―医療― 社会保障給付:2100年推計は506兆円 制度持続は? http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/medical/news/20041015k0000m040077000c.html 三菱総合研究所は14日、約100年後の2100年段階で年金・医療・介護の社会保障給付費が…

『坊っちゃん』 夏目漱石 著 を読んで

昨日、久しぶりに夏目漱石の『坊っちゃん』を読んだ。 私は、夏目漱石の作品は、中学から高校時代までの間に大抵読んだのだが、その時期に読んで以来再読したものは数えるくらいしかない。漱石に関する詳細な文学や評伝の研究には触れた事は殆どありませんが…

アパシー・シンドローム(apathy syndrome)とうつ病:学生の無気力現象

うつ病は、ここ最近のテレビ・新聞などの報道やうつ病に似た憂鬱感や無気力の症状を経験する人の増加によって非常によく知られた精神障害(精神疾患)になっています。 その罹患率(生涯でうつ病に一度でも罹る確率は約10%)の高さから、軽症うつ病であれ…

グローバリゼーションの功罪と文化の固有性の喪失

冷戦構造の崩壊によって、自由経済市場が加速度的に未開社会を含む世界の全ての地域に拡大している。 それまで貨幣や商品が流通していなかった未開地域において市場経済化が進む事そのものが、良いことか悪いことなのか。経済学でいう所謂『規範的な部分』を…

フランスの哲学者ジャック・デリダ死去

仏哲学者のジャック・デリダさん死去 -asahi.com-http://www.asahi.com/obituaries/update/1010/001.html フランスの著名哲学者ジャック・デリダさんが8日深夜から9日未明にかけて、膵臓(すいぞう)がんのためパリの病院で死去した。74歳だった。AFP…