相補的な関係性(complemental relation)と対称的な関係性(symmetric relation)

id:cosmo_sophy:20050216において示された関係性は、『相補的な関係(complemental relation)』である。 相補的な関係性は、支配と服従の関係を戯画化した『主人と奴隷のパラドックス』で奴隷のいない主人は想定できないように、一方の行動パターンと他方の行…

“国民性の差異”を生み出す文化的環境と経験的学習

ナチスドイツの台頭によるユダヤ人迫害を避けて、アメリカに亡命したゲシュタルト心理学者にクルト・レヴィン(K.Lewin)がいます。 レヴィンは、科学的な還元主義に基づく行動科学的な心理学ではなく、知覚研究を基盤において心理現象の全体性や有機性を重視…

大阪教職員殺傷事件から社会システムを通して少年事件を考えてみる。

大阪教職員殺傷:襲撃対象は元担任か 逆恨みした可能性も 大阪府寝屋川市立中央小で14日、教職員3人が殺傷された事件で、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された卒業生の無職少年(17)が、6年生の時の担任だった男性教師を襲う目的で同校に侵入した疑いの強…

『遊びと空想の理論』からの連想による精神分析の“場”の特殊性

現実と想像の境界線が朦朧として、曖昧になる精神状態を呈す統合失調症(精神分裂病)に対するサイコセラピー、カウンセリングの本質が何処にあるかを考えると、それはメタ・コミュニケーションの傾向や性癖の変容にある。 これは、カウンセリング及び心理療…

「いんちき」心理学研究所を巡る沈黙のオーディエンスの意識化と孤独感について

「いんちき」心理学研究所|終了 「いんちき」心理学研究所|終了:その後 憂鬱なプログラマによるオブジェクト指向日記:沈黙のオーディエンス 浅野教授という方が開設されていた「いんちき」心理学研究所が、閉鎖の運びとなったようです。 「いんちき」心…

グレゴリ−・ベイトソンの学際的研究:Ecology of Mind…自然と文明の共生

グレゴリ−・ベイトソン(Gregory Bateson:1904-1980)のコミュニケーション理論が既存の学問体系に投げ掛けた問いとは、統合失調症の発病や経過に関する家族システムだけの問題に留まらない。 ベイトソンがコミュニケーション理論に託した革新的な野心とは、『…

統合失調症の“言葉のサラダ”とベイトソンのコミュニケーション理論の研究

統合失調症(精神分裂病)の代表的な症状に、言語の論理性の混乱と他者とのコミュニケーションの障害を示す“言葉のサラダ”というものがあります。 言葉のサラダとは、言語によって構築される観念(概念)と意味の体系が破綻して、支離滅裂で共通理解不能な言…

人間社会の“脅し”と自然世界の“脅し”のアナロジーの不適切性

id:cosmo_sophy:20050210において、人間固有の言語的なコミュニケーションの新たな可能性の地平としてのメタ・コミュニケーションについて粗描しました。 恐喝未遂:俳優・萩原健一容疑者を逮捕 出演料1050万円要求の疑い−−警視庁http://www.mainichi-ms…

メタレベルの言語的コミュニケーションの特異性と可能性

人間の言語的コミュニケーションの特異性というものが何処にあるのかと考える時には、対照的な一般化された抽象レベルの存在が思い浮かぶ。 それは、現実世界に存在する個別のバラバラな事物に、“概念”によって秩序を与え、共通理解を可能にする事でもある。…

小川洋子『博士の愛した数式』を読んで:永遠の真理と愛

書籍:博士の愛した数式 著者:小川洋子 出版:新潮社 小川洋子という女流作家の小説を、偶然、手に取って読んでみました。 『博士の愛した数式』の書籍はそれほど重厚ではないので、気軽に比較的短時間で読み終えることが出来ます。小川さんの文章は、綿密…

人格障害(クラスターB)の認知理論的な解釈

クラスターB(B群)……相互的な対人関係を築けない情緒不安定や依存性を特徴とし、自己の欲求や衝動を制御する良心や規範意識の乏しい群 境界性人格障害(borderline personality disorder) かつては、境界例と呼ばれ、精神病と神経症の中間領域にある人格傾…

人格障害(クラスターA)の認知理論的な解釈

心理学の概念としての『人格(personality)』とは、『個人を特徴づける継続的な特性の集合であり、個人に特有の一貫性のある思考・感情・行動・認知・対人関係のパターン』であると定義される。 その為、心理学及び精神医学の領域で、人格に言及する時には、…

抑うつスパイラルによる悪循環からの離脱の為の認知転換

認知療法の創始者であるアーロン・ベックが、うつ病の認知の三徴候(cognitive triad)と呼んだのは『自己に対する否定的な認知・世界に対する否定的な認知・将来に対する否定的な認知』でした。 以前(id:cosmo_sophy:20050119)、認知療法の理論による気分障害…

気分障害の下位分類としての気分変調障害と気分循環障害

うつ病(単極性障害)や躁うつ病(双極性障害)は一般的な病名として、現在、広く人口に膾炙しつつありますが、id:cosmo_sophy:20041216において、気分の異常な興奮や落ち込み、感情の不安定さを主訴とする病態の高次分類として気分障害を上げました。うつ病…

現代における“正義の戦争”と“戦争の日常化”による倫理の頽落

確かに、現代の流動的で多様性に満ちた国内社会や国際社会の環境下にあっては、インマヌエル・カントの『汝の人格及びあらゆる他者の人格における人間性を常に同時に“目的”として取り扱い、決して単に手段としてのみ取り扱う事のないように行為せよ』という…

ネグリ=ハート『<帝国>』の雑感2:グローバリゼーションの世界秩序と近代国民国家の誕生

著作:『 グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』 著者:アントニオ・ネグリ,マイケル・ハート 訳者:水嶋 一憲,酒井 隆史,浜 邦彦,吉田俊実 出版社:以文社 ネグリは著作『』において、現代のグローバル社会は、表層的な無秩序と混沌の背景に、…

ネグリ=ハート『』の雑感:現代世界のグローバリズムと関係性のネットワークとしての

著作:『 グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』 著者:アントニオ・ネグリ,マイケル・ハート 訳者:水嶋 一憲,酒井 隆史,浜 邦彦,吉田俊実 出版社:以文社 1989年に、資本主義と社会主義のイデオロギー対立の象徴であった東西ドイツを隔ててい…

ニ期目のブッシュ政権始動とアメリカ・日本の市場経済戦略

1月20日、アメリカのブッシュ大統領の政権2期目が、“世界秩序を維持する強いアメリカ”を前面に打ち出したワシントンでの就任演説と共に始動する事となりました。 現代の国際社会において、ブッシュが国民から民主的選挙を通して任命されたアメリカ合衆国…

エリック・バーンの“精神分析の口語訳としての交流分析”

フロイトやラカンの精神分析理論は、使用される専門用語の数が多く、専門用語によって指示される概念が難解であるだけでなく、その理論の全体を見渡す為には構造論・力動論・発達論・臨床技法など複数の理論を系統的に参照する必要があります。その精神分析…

古典的な神経症(ヒステリー)概念と人格障害の概略

精神分析が、主要な分析対象として、その病態を精細に理論化した精神疾患は、O・アンナやエリザベスの症例に典型的な『神経症(ヒステリー)』である。 フロイトが、母親への愛情と父親への対抗心といった親子関係のエディプス・コンプレックスの葛藤に苛ま…

デビッド・D・バーンズの10種類の認知の歪み(偏り)

臨床心理学の認知療法の理論によって、気分障害(うつ病等気分の変調を主症状とする病態)の抑うつ感の生起を説明する場合に必要不可欠になってくる図式は、『外界の事象→認知(思考)→感情・気分→行動』という行動メカニズムの図式です。この図式が成立した…

アーロン・ベックの抑うつ理論と簡潔明瞭な認知療法の確立

うつ病の症状の種類と重症度を客観的に測定する尺度として、アーロン・ベック(Aaron T. Beck)が1961年に考案し実用化した『BDI(Beck Depression Inventory:ベック抑うつ評価尺度)』という評価尺度があります。 ペンシルバニア大学のアーロン・ベックは、精…

知識(knowledge)と知恵(wisdom)の相補性とユングのコンステレーション(constellation)

知識(knowledge)と知恵(wisdom)は異なるが、それらは相互補完的な関係にある。 膨大な知識も深遠な知恵もそれ単独では、世界を十全に把握し、人生の価値を思う存分満喫する事は出来ない。 私は、精神性と身体性のアナロジーとして、よく知識と知恵の対比対照…

ジェフリー・ディーヴァー『石の猿』:毛沢東の独裁体制とルサンチマンの独善的支配欲求

id:cosmo_sophy:20050106,id:cosmo_sophy:20050108において、ジェフリー・ディーヴァー『石の猿』の概略と感想を記した際に、毛沢東時代の中国共産主義の暗黒面である『大躍進と文化大革命』について軽く触れたが、その暗黒こそがこの小説の敵役である蛇頭幹…

性格心理学の伝統的方法論としての『類型論と特性論』

人間の個人が動物の個体と異なる事を示唆する心理学的な概念を考えるならば、『人格(personality)』と『性格(character)』がまず考えられます。 人格と性格は、後天的な経験と環境の影響を非常に強く受ける可変的で柔軟性のあるものですが、一般的に年齢が高…

病態の三段階とタイプA考察による自己の心身状態への気付きの重要性

人間の病気(疾患)の原因は、要素還元的に考えると、大きく以下の要因に分ける事が出来る。 遺伝的要因・先天的体質 化学物質、放射性物質による汚染・環境的要因・外部の有害刺激(ストレッサー) 性格・人格の特徴による思考・感情・行動のパターン 喫煙…

QOL概念が近代西洋医学に与えた影響とルネサンスの科学精神

医療行政、社会福祉、カウンセリング等の臨床心理学アプローチの目的は、20世紀半ば頃まで『量化可能な生活・健康の物質的水準の向上』に置かれていた。 その物質文明的価値観を変革する流れとして、功利主義に基づく“quantity of life”から全人的アプロー…

ライフスタイルの構成と要素:私を知り、あなたを知るということ。

『ライフスタイルとは何か?』という定義を一義的に述べる事は難しいし、個人差が大きく、その内容や程度は、正に千差万別の様相を呈することになる。 ライフスタイルを出来る限り詳細に知る事は、相手をより幅広く、奥深く知る事につながる。 他人同士が一…

アメリカの最高裁のバーチャル児童ポルノに関する判断

http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/culture/story/20020417205.html レンキスト主席裁判官はこう記す。「わが国の児童ポルノ関連法を確実に施行するという目標は切実なものである。(児童ポルノ防止法は、)児童ポルノの定義を広げ、現実の子どもがあからさ…

奈良市の小1女児誘拐殺害事件と擬似児童ポルノ商品群の問題:大人になるという事とは何か?

奈良市で有山楓ちゃん(7)が殺された小1女児誘拐殺害事件の容疑者として、元毎日新聞販売所従業員の小林薫(36)が逮捕された事は記憶に新しい。 この誘拐殺害事件の起こった社会的背景を考察し、小林薫容疑者の心的発達過程と環境的要因、そして、事件…